親の相続財産に『農地』があった!売却または活用に必要な手続とは? (2022.02.02)

相続が発生した際にまずやらなければならない事が、亡くなった方の財産調査です。
ここ日本における財産の多くは『不動産』と言われており、田舎の両親は持ち家、という方は決して少なくないでしょう。
不動産は法務局の登記簿謄本により所有者等の詳細が管理されていますが、その項目の中には、『地目』といってその土地の種類・用途が記載されている箇所があります。
その中でも『農地』と表記されている土地の扱いには法的な様々な制限が課されているため、相続財産の中に農地があった場合は注意が必要です。
今回のトピックスでは、『農地』を相続する際の売却または活用の為の手続について取り上げていきたいと思います。
まずは農地を相続する際のメリット・デメリットを簡単に確認してみましょう。
【メリット】
・農地を賃貸ができれば賃料が見込める
・売却、農地以外に活用すれば資産になる
【デメリット】
・一度相続すると簡単には手放せない
・活用が出来なければ負の遺産となる
上記メリット挙げた通り、そのまま活用or農地以外に転用して活用or売却のいずれかの方法が出来れば相続人の資産となり得ます。
ご両親と同居していた場合やご自身でも農業を営んでいる方はそのまま活用することもあるでしょうが、別居でしたり、他のお仕事をされている方は賃貸に出したり、売却したりする方が現実的でしょう。
しかし農地の賃貸・売却には農地法による制限があり、最悪の場合、何も活用が出来ず、手放す事も出来ずに維持管理のコストがかかり続ける状況も想定せねばなりません。
個人や法人が農地を売買または賃借するには、原則、その農地を管轄する農業委員会の許可(農地法第3条)が必要となります。
こちらの基準については管轄によって異なりますので、詳細についてはその不動産を管轄している各市町村の農業委員会に問い合わせてみましょう。
では、実際に農地を相続するとした時に、「法務局での登記申請」と「農業委員会への相続届出」の手続が必要となります。
まずは不動産の『登記申請』(=名義変更)から行います。
現時点(2022年1月現在)では相続登記について法律上の義務はないですが、2024年4月より相続登記の義務化される予定ですので、相続する場合は登記手続が必須となります。
こちらは法務局での申請となり、ご自身でする事も出来ますが、戸籍謄本等の必要書類の手配やその後の対応を考慮すると司法書士等の専門家に依頼する方が無難と言えるでしょう。
ただし、『遺言』による名義変更の場合、遺言書の内容によっては農業委員会の許可が下りない場合もありますので、このケースの際は事前に農業委員会に問い合わせましょう。
農地の所有権を取得した相続人は、登記名義人となった日から10ヶ月以内に農業委員会に許可の届出をする必要があります。
(参考)⇒農林水産省サイト『農地の売買・賃借・相続に関する制度について』
こちらの届出の際にそのまま相続するのか、農地を賃貸・売却するのかによってその後の手続内容が異なってきます。
農地をそのまま農地として他の農家に賃貸・売却するケースはそれほど多くないと思いますので、今回は農地以外の地目に転用(以後、『農地転用』と表現します。)するケースで見ていきましょう。
農地にはいくつか種類があり、転用許可が不要な場合や、そもそも農地転用が出来ない場合もあります。
市街化区域内にある農地は農業委員会に届出れば事足りますが、区域外ですと4ha以下では都道県知事に、4ha超では農林水産大臣にそれぞれ許可を求める事となります。
下記ののいづれかに該当する場合、農地転用許可はおりません。
① 農用地区域内農地・・市町村が定める農業振興地域整備計画において農地用区域に指定された農地
② 甲種農地・・市街化調整区域内にある、特に良好な営農条件を備えた農地
③ 第1種農地・・0ha以上の集団農地や、農業公共投資の対象となっている農地、生産性の高い農地
下記の場合、届出により農地転用が可能となります。
④ 第2種農地・・将来的に市街地として発展する環境であったり、農業公共投資の対象外であって生産力の低い小団地農地
⑤ 第3種農地・・市街地区域内、都市的整備がされた区域内の農地
どの農地についても必ず必要となる書類は、下記のとおりです。
・転用予定農地の公図
・転用予定農地の図面
・転用予定農地および周辺地の写真
登記簿謄本と公図については法務局に請求する事で取得出来ます。
図面については住宅地図をインターネット等で取得し、対象となるどの農地を転用予定なのか分かるようにしておきます。
その他、農地転用後に住宅建築する場合等、内容によって必要書類が異なってきますので、こちらも必ず事前に確認が必要です。
上記に挙げた農地転用の許可申請は、内容によって手続きもかなり複雑になります。
煩雑な手続きが面倒だという方は、行政書士による代理申請を検討するのも良いでしょう。
いかがでしたでしょうか。
今回は相続した農地の農地転用について焦点を当てて取り上げましたが、実際の手続に進むまでに遺産分割協議等を含めいくつかものハードルがあります。
個人で進める事も可能ではありますが、登記手続・農地転用をそれぞれ対応するのはかなり骨が折れますし、専門家に依頼する際にも司法書士と行政書士で別々の事務所に依頼した場合、うまく両者が情報を共有して事を進めてくれるとも限りません。
弊社では相続専門の司法書士と行政書士が専門チームを組んでご対応しております。
また、その後の売却・活用についても多くの不動産会社・建設会社と提携しているため、すべてワンストップ対応することが可能です。
相続でお困りの際は目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、まずは一度お気軽にご相談ください。