『デジタル遺産』とは?相続の際の注意点と対策方法 (2022.02.10)

金融資産のペーパーレス化など、いわゆるデジタル化が急速に進む中、相続業界にもその波は確かに押し寄せてきています。
今回はそのデジタル遺産の相続の概要をご紹介させていただきます。
・金融機関のネットバンキング口座(通帳なしの口座)
・ネット証券口座(SBI証券、マネックス証券など)
・暗号資産(ビットコイン、イーサリアムなど)
・NFT(非代替性トークン)
・SNSのアカウント
・電子マネーのチャージ残額
・マイレージ、ポイントなど
基本的に、スマートフォンやパソコンなどの電子端末内で完結してしまうようなものは、デジタル遺産となってくるでしょう。
NFT(Non-Fungible Token)とは日本語にすると「非代替性トークン」となり、つい最近注目を浴びるようになったのですが、端的に言えば「デジタル上で唯一無二である事を証明する技術」を指します。
少し語弊があるかもしれませんがここでは、ネット上の写真・アート等の簡単にコピー&複製できてしまうものでも、デジタル証明書・著作権・シリアルナンバー等が付与されることで非代替性データとなるので、著作権や使用料等を主張できる、とイメージしてください。
暗号資産やNFTについては、所有権を主張できるという観点では財産たり得ますが、相続財産に含まれるか否かは、現状、まだまだ議論の余地が残ります。
ポイントについては、各ポイントを発行している会社の取り扱いによって、相続財産の対象となるか判断が異なるようです。
相続手続きというと通常、金融機関に解約申し込みの手続をしたり、不動産の名義変更については法務局での登記申請が必要だったりと、ある程度決まった筋道に則り手続をしていきます。
では、デジタル遺産と通常の遺産相続とを比較しすると、下記のような特徴が挙がります。
そもそも基本的に郵送物が届かないため、被相続人が亡くなってからも、その存在に気づかない可能性があります。
近年のスマートフォン普及の背景から、各サービスでタイムパスワードや2段階認証などが設定されており、スマートフォン自体にロックがかかっている場合、財産を調べるところまで辿り着くのが極めて困難であることが想定されます。
ご自身が設定したパスワードでも、しばらく時間が経って忘れてしまい、パスワードを初期化せざるを得なくなった、なんて経験をされた方も多いでしょう。
特にこういった金融資産のパスワードはより複雑に設定されているケースが多く、相続人でも共有されている方はかなり限られるでしょう。
もしご自身がデジタル資産を所有していて、将来、相続が発生した際に相続人に手間をかけさせたくないとお考えの方は、下記のような対策を取っておくと良いでしょう。
・自分が亡くなった時のために、遺産目録を作成しておく
・パスワードなどを紙に書き記しておき、金庫などで保管して、信用できる人にはその存在を伝えておく
・遺言作成の際に、デジタル遺産の内容についても触れておく
いざ相続が発生したときに、相続人が困らないように財産の状況を共有しておく機会も必要となるでしょう。
また、なかなかそこまで信頼がおける相続人がご自身の周りにいない場合には、『死後事務委任契約』を活用するというのも一つの手段です。
⇒【遺言で出来ない事を実現する『死後事務委任契約』の活用方法】
生前にネット証券で株取引をしていた親に相続が発生した当、ご自身がデジタル遺産を含む相続人になった場合の対応方法をいくつかご紹介いたします。
ネット証券でも、ホームページの問い合わせサイトやお客様窓口に相談すると、取引残高報告書などを発行してくれるケースがあります。
知らないパスワードが設定されている場合、無理やり解除しようとすると全く接続できなくなるケースもあります。
そのような事態を回避するため、データ解析・パスワード解除を請け負っている専門会社に依頼するのもひとつの手でしょう。
費用は会社によってまちまちですが、概ね30,000〜50,000円程度の費用が相場のようです。
前述のネット証券や暗号資産取引では、プラスの財産だけとは限らず、先物取引等でマイナスに転じている可能性も否定できません。
調査の結果、負債の方が多い場合は、相続放棄の申立てをしていく必要があります。
いかがでしたでしょうか。
デジタル遺産の相続はまだまだ取り扱いや運用方法が定まっておらず、通常の相続財産のようにスムーズに相続できるか不安に感じるところは多いと思います。
当法人では、こうしたデジタル遺産が発覚した場合でも、まずは遺産の調査から始め、ご一緒に解決策を導き出せるよう、サポートしてまいります。
どう対応してよいのか全く分からない、と諦めてしまう前に、ますは一度、司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまでお気軽にご相談ください。