相続人の中に成年被後見人と成年後見人がいる場合の相続手続き (2020.05.22)

前回のトピックスで、相続人の中に未成年者が含まれる場合を取り上げました。
相続人の中に未成年者とその親権者が含まれる場合、原則は特別代理人の選任が必要であることを前回のトピックスにて取り上げました。
同様にして、遺産分割協議において利益相反に該当するものは他にもあります。
今回のテーマでは、「相続人の中に成年被後見人とその成年後見人が含まれる場合」を取り上げてみます。
※遺産分割協議における利益相反とその問題点、特別代理人については、前回の相続トピックスをご覧ください。
相続人が重度の認知症や知的障害などを患っている場合、ご自身で他の相続人と遺産分割協議を行うことは難しく、協議の際に不利益や不都合が生じてしまいます。
このような場合は、家庭裁判所に後見開始の審判の申立を行い、成年後見人を選任してもらうことができます。
成年後見人は、本人(=成年被後見人)の利益や生活などを考慮し、本人の財産の管理・保全を行うことなどを任務とします。今回のケースにおいては、選任された成年後見人が当該相続人の代理人して、遺産分割協議に参加します。
相続発生前に親族間で成年後見人になっていた場合、本ケースのように成年被後見人と成年後見人の両方が相続人となってしまう事があります。このような場合は利益相反に該当するため、成年後見人は成年被後見人の代理人として遺産分割協議に参加することができません。
よって遺産分割協議の為の特別代理人の選任の申立により選任された特別代理人が、成年被後見人の代理人として遺産分割協議に参加することになります。
相続人の中に成年被後見人とその成年後見人が含まれる場合でも、既に「成年後見監督人」が選任されていれば、原則、特別代理人を選任する必要はありません。
当該後見監督人が成年被後見人の代理人となるためです。(成年後見監督人が相続人の一人である場合を除く。)
成年後見監督人とは、家庭裁判所によって選任された、成年後見人の事務を監督する人のことを指します。(主に司法書士や弁護士等の士業監督人が選任されるケースが多いです。)
家庭裁判所は、必要と認めるときは、成年後見監督人を選任することが可能です。成年後見監督人は、後見人が行う事務の内容を確認し、定期的に家庭裁判所に報告します。
成年後見人には、包括的な代理権や財産管理に関する大きな権限が与えられており、万が一、権限が濫用されると、本人に重大な不利益を及ぼすこととなります。
しかし、当然ながら、本人は後見人を管理・監督できる状況にありません。そこで、代わりに第三者が後見人を監督する必要が生ずるのです。
このようにして、成年後見監督人は成年後見人の監督者として、遺産分割協議の際に当該後見人の代理として成年被後見人の代理をする事があるのです。
いかがでしたでしょうか。
遺産分割協議に特別代理人の参加が必要となる場合、予め特別代理人を選任する必要があります。
家庭裁判所との打ち合わせなどは、事前準備に時間がかかります。このようなケースに当てはまる場合は、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズにお早めにご相談ください。