自筆証書遺言書保管制度について (2020.06.18)

これまで自筆証書遺言にかかる遺言書といえば、自宅の仏壇や金庫で保管する、といったケースが大多数のようでした。
しかし当然ながら、遺言書の紛失・亡失や、相続人によって偽造されるというリスクもあります。
そういった問題を解決するため、令和2年7月10日施行の法改正により自筆証書遺言書を法務局で保管する制度が新設されました。
今回は自筆証書遺言書保管制度について取り上げてみたいと思います。
≪申請場所≫
②遺言者の本籍地
③遺言者が所有する不動産の所在地
①②③いずれかを管轄する法務局に申請することができます。
ただし、全国すべての法務局で保管の申請ができるわけではありませんので注意が必要です。
保管の申請ができるのは、東京周辺では下記の法務局になります。
東京法務局
【本局、板橋出張所、八王子支局、府中支局、西多摩支局】
横浜地方法務局
【本局、川崎支局、横須賀支局、湘南支局、西湘二宮支局、相模原支局、厚木支局】
さいたま地方法務局
【本局、川越支局、熊谷支局、秩父支局、所沢支局、東松山支局、越谷支局、久喜支局】
千葉地方法務局
【本局、市川支局、船橋支局、館山支局、木更津支局、松戸支局、香取支局、佐倉支局、柏支局、匝瑳支局、茂原支局】
・・・他
≪申請できる人≫
保管の申請をすることができるのは、遺言者本人のみ
遺言者本人が法務局に行き申請をしなければなりません。
また、代理人に預けて代理人が本人に代わって法務局に保管の申請をすることもできません。(遺言書の性質を考えれば当然と言えるでしょう。)
つまり司法書士や弁護士、家族が本人から自筆証書遺言を預かって保管の申請を行うことはできません(ただし保管申請の手続き書類を司法書士等が代理して作成することは可能です)。
なお、本人が法務局に保管の申請をする際に、付き添い程度の介添えであれば他人の同伴も許されます。
≪遺言の申請者(遺言者本人)ができること≫
遺言書保管の申請をした人は、閲覧の請求をすることにより、保管されている遺言書の内容を確認することができます。
閲覧方法は、
・遺言書原本の閲覧
の2種類があります。
モニターによる閲覧の場合には全国どこの遺言書保管所でも閲覧の請求をすることができます。
ただし遺言書原本の閲覧は、保管されている法務局にしか請求をすることができません。
遺言書の閲覧を請求する場合にも手数料が必要になります。
モニターによる閲覧の場合には1回につき1,400円、原本の閲覧は1,700円の手数料を納付する必要があります。
遺言書保管の申請をした人は、申請の撤回をすることにより、遺言書を返還してもらうことができます。
申請の撤回には手数料はかかりません。
また撤回し、返還された遺言書は、自筆証書遺言の要件を整えていれば、その後も有効なものとされています。
遺言書保管の申請をした後に遺言者の氏名、住所等に変更があった場合には、その旨の届出を行う必要があります。
変更の届出は全国どこの遺言書保管所にもすることができ、また郵送により届出をすることも可能です。
≪相続人等ができること≫
特定の遺言者について,自分が相続人,受遺者等又は遺言執行者等となっている遺言書が遺言書保管所に保管されているかどうかを証明した書面(遺言書保管事実証明書)の交付を請求することができます。
この遺言書保管事実証明書の交付請求は遺言者がなくなった後にのみすることができます。
相続人等は、遺言書の画像情報等を用いた証明書(遺言書情報証明書)の交付請求及び遺言書原本の閲覧請求をすることができます。
これによりどのような内容の遺言が保管されているか知ることができます。
遺言書情報証明書の交付請求も遺言者が亡くなった後にのみすることができます。
相続人等が証明書の交付を受けると、その方以外の相続人に対して遺言書を保管している旨の通知がなされます。
これは、相続人間での不公平を生じさせないための措置と言えます。
相続人等は、閲覧の請求をすることにより、保管されている遺言書の内容を確認することができます。
閲覧の方法は遺言申請者と同様に、
・遺言書原本の閲覧
の2種類があります。
相続人等による閲覧は遺言者が亡くなった後にのみすることができます。
②の交付請求の時と同様に、相続人等によって遺言書の閲覧がなされると、その方以外の相続人に対して遺言書を保管している旨の通知がなされます。
①遺言書を紛失したり、受遺者や相続人が遺言書を発見できないといった事態を避けることができる。
②遺言書が生前に発見され、遺言内容が相続人等に知られてしまったり、遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿といったリスクを避けることができる。
③申請時に遺言保管官により、遺言書が法務省令に定める様式に則っているかどうかを確認するので、様式不備によって、遺言が形式的に無効となることを避けることができる。
④公正証書遺言より費用を抑えることができる。
①遺言書があることに相続人が気付かず、遺言書がなかったものとして相続人で協議し、財産分配される可能性がある。
②法務局でのチェックはあくまで様式に則っているかの形式面でのチェックであり、法的に問題があるかどうかまでは精査されないため、将来的に問題が発生する可能性がある。
③遺言者本人のみが申請できるため、何らかの理由で出向けない状態にある遺言者は制度を利用できない。
上記のようにどちらに転ぶかによって、メリットがそのままデメリットに転じる可能性もあります。また内容の部分までは精査されないため、遺言者の望む形を実現できるかどうか、といった部分に関しては、やはり司法書士等の専門家に確認してもらう必要があるでしょう。
いかがでしたでしょうか。
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