特別寄与料について (2020.07.07)

寄与分とは、『亡くなった方の財産の維持または増加について特別に貢献した相続人は、その分法律に定められた相続分(法定相続分)より多くの財産を取得することができる』という制度です。
この制度は、相続人が複数いる場合の、相続人間の不平等を是正するために設けられました。
例えば親の家業に従事して親の財産を増やした人や、病気の親を介護して財産の減少防止に貢献した人がいる場合に、法定相続分より多くの財産を取得できるという制度です。
但し、これまで、寄与分を受けられるのは相続人に限られまていました。
つまり、例えば亡くなった方の息子の嫁が生前に看護していたとしても、寄与分を主張することはできなかったのです。
これでは相続人以外が特別の寄与をしても報われないことになってしまいます。
そこで相続法が改正され、2019年7月1日以降に開始した相続については、相続人以外でも特別寄与料を請求することができるように条件が緩和されました。
特別寄与料を請求できるのは、
①亡くなった方に対して無償で療養看護その他の労務の提供したことにより、
②亡くなった方の財産の維持または増加について特別の寄与をした、
③亡くなった方の親族
が対象となります。
先に例で挙げた、亡くなった方の息子の嫁が無償で介護してきた場合などが該当します。但し、介護の際に対価として金銭などを受け取っている場合には、特別寄与料を受け取ることはできません。
例えば亡くなった方の療養看護することによって訪問看護等のサービスを利用せずに済めば、その分財産の減少を防止したといえるでしょう。
親族とは、6親等内の血族、3親等内の姻族、配偶者の範囲に属するものをいいます。
特別寄与料は亡くなった方の相続人に対して請求することができます。
相続人が複数いる場合には、その相続人の相続分に応じて請求をすることができます。
特別寄与料が100万円あり、各相続人の相続分がAさんは2分の1、Bさんは4分の1、Cさんは4分の1であるとします。
この場合、Aに対しては100万円の2分の1である50万円を、BとCに対しては100万円の4分の1である25万円をそれぞれ請求することができます。
特別寄与料は特別寄与者と相続人との協議によって決まります。
協議によって決まらない場合は、家庭裁判所に協議に変わる審判を請求することができます。
その場合、家庭裁判所は、寄与の時期、方法、程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して特別寄与料を定めることができる、とされています。
特別寄与料を認めてもらうには、介護をした証拠を残しておくことも重要です。
「◯月▲日、8時から17時まで~のようなお世話をした。」
といった詳細な介護日誌を付けておくと認められやすくなります。
個人的な生活の記録を記した手帳や日記でも、介護の様子をメモしておくことで証拠に成り得ます。
前述の特別寄与料を請求する場合には、
・特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六ヶ月を経過したとき
又は
・相続開始の時から一年を経過したとき
までとなっています。
これは、特別寄与請求権者は療養看護等していることから、比較的容易に被相続人の死亡を知ることが出来る場合が多いと考えられ、また、金銭の支払請求を受ける可能性がある相続人の立場を考慮すれば、できるだけ早期に法律関係を確定させる必要があるとの考えから上記の期間制限が設けられました。
相続が発生してから六ヶ月、一年という期間は、思いの外あっという間に過ぎてしまいます。
直接的な相続人ではないが療養看護等を通して被相続人の財産の維持増加に寄与した、と考える親族の方は、出来るだけ早めに各相続人に対して、特別寄与料を請求又はお早めに協議をすることをお勧めします。