遺産分割協議と債務整理手続き (2020.07.16)

前回までのトピックスでは、相続手続きのみに着目してトピックスを掲載してきましたが、今回は相続と他の手続きの関連という観点から、遺産分割と債務整理手続きとの関連をご説明させて頂きます。
数は多くない事例ですが、ご相談を受けて「これは、、」とハッとした事例を記事にしたいと思います。
上記の相続関係において、被相続人の遺産は自宅の土地建物のみであり、長男が全て相続することで話が進んでおり、手続きのご相談に来られました。
相続税が課税されるリスクもなく、担当の司法書士が「今回はスムーズに手続きが進みそうだ。」と思いながら、談笑交じりに各種委任状等に署名捺印をもらっていた矢先のことです。
これから、遺産分割協議書を作って判を貰おうとしている中でのこの長男様の何気なく発した一言に、担当の司法書士は冷や汗をかいたそうです。
しかし、いったいどういう事でしょう?
民事再生手続きとは、『借金の返済が困難となった人が、裁判所に申立てを行うことによって、借金の減額を目指す救済制度』のひとつです。
その為、土地や家屋と言った価値の高い資産を保有したままで手続きを行うことは、この制度の趣旨に沿ったものではありません。
なぜなら、個人再生には清算価値保障の原則というものがあり、資産が多ければそれだけ返済額も高額となる仕組みとなっているからです。
逆に、民事再生手続き中に相続が発生し、遺産を貰えるのに自己の判断で遺産分割協議により相続分を放棄してしまった場合、この事実が裁判所に明るみになると民事再生手続きに支障をきたしてしまう恐れがあります。
もう少し分かりやすく言うと、
①相続で遺産を取得すると弁済総額が上がる
②遺産分割協議において自己の相続分を放棄した事実が裁判所に明るみになってしまうと、再生計画が認められず民事再生手続きが否認されてしまうおそれがある
今回は②のケースだったのです。
後日、当法人から民事再生手続きを受任している弁護士法人にご連絡をして、内容を詳しく聞き打合せたところ、二男様は今回のお父様の相続について、家庭裁判所に正式に相続放棄の申述をしてもらうことで話がまとまっていきました。
遺産分割協議の中でする相続分の放棄と違い、家庭裁判所へ申し立てる相続放棄の申述は、初めから相続人で無かったものとみなされる為、民事再生手続き中に行っても再生計画に影響を及ぼすことは一切ないのです。
ただし相続放棄には、相続開始の事実を知ってから3か月以内に申立てをしないと原則認められませんので注意が必要です。
また、今回の相続関係では、相続放棄者(二男)以外にも第一順位の相続人(長男)がいたから良かったものの、第一順位の相続人が一人であって、かつその相続人が相続放棄をしてしまうと、相続人がガラリと変わってしまいます。
相続放棄の絡む法定相続人の考え方はこちら↓
もし相続人の中に債務整理手続き中の方がいる場合、お早目にその事情も含めご相談頂ければと思います。
こういった特殊な事情を含む相続関係ですと、相続を専門としている事務所でないと思わぬ見落としが発生、取り返しのつかない状況になりかねません。
是非一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、お気軽にご相談下さい。