成年後見制度のメリット・デメリット (2020.09.04)

ご両親の相続等や各種メディア報道などをきっかけに、ご自身の老後を見据えた財産管理等の在り方を検討する方が増えています。
生前対策として遺言書を書く方もおられますが、遺言書は遺言者の相続開始後でないと効力が生じないため、老後の生活への備えや認知症対策には適しません。
そこで、上記のニーズに対応するための方法の一つに「後見制度」があります。
過去のトピックスでは後見制度の概要や、任意後見について何度か取り上げてきました。
今回はそのメリット・デメリットについて検討したいと思います。
前提として、成年後見制度は認知症、知的障害、精神障害等の理由で判断能力が不十分な人を保護・支援するための制度です。
成年後見人が本人に代わり、必要な契約等を締結したり、財産管理等を行います。
制度の利用の判断基準・申請方法等は下記の記事より詳細をご覧ください。
また、上記のように、法定後見では任意後見とは前提条件が異なってくる点に注意が必要です。
成年後見人が本人の法定代理人として、本人の通帳やカードの管理、入出金や振込を行うことができます。
また、家庭裁判所の許可等を要する場合もありますが、不動産の売買契約などを行うことも可能です。
親族が知らない間に、本人が訪問販売で不要な健康食品を大量に買ってしまった、自宅のリフォーム詐欺の契約をしてしまった、等の話を耳にしたことはありませんか?
このような場合に、成年後見人を通さずに本人が行った契約を、取り消したり代金の返還を請求したりすることが可能となります。
同居親族などによる、本人の財産の使い込みを防ぐことができます。
銀行に対して成年後見人になった旨の届出を行うことで、成年後見人以外の人は預貯金の引き出しができなくなるためです。
これまで見て頂いたとおり、成年後見制度は本人の保護・支援に有益な制度ではあります。
反面、上記目的を達成するために厳格な運用がなされていることから、以下のような弊害も生じています。
まず、成年後見人をつけるための申立てを行うためには、約1~10万円ほどの印紙代や鑑定料などの実費がかかります。
申立てを司法書士や弁護士に依頼する場合は、別途10~30万円程度の報酬費用が必要です。
また、医師による診断書が必要と判断された場合、その作成費用もかかってきます。
次に、成年後見人に司法書士、弁護士等の専門職が選任された場合は、管理財産額に応じて成年後見人に月額2万~6万円の報酬を支払わなければなりません。
費用節約のため親族を成年後見人に希望しても、家庭裁判所の判断で専門職が選任されることもあります。
成年後見人による本人の財産の処分を認めるかどうか、家庭裁判所は「本人の財産の保護」という観点から判断を行います。
そのため、本人の生活や健康を維持するための出費以外は認めらません。
例えば、株式や不動産への投資といった積極的な資産運用はすることができません。
相続税の基礎控除額(=3000万円+600万円×法定相続人の人数)以上の財産がある場合、相続税の申告が必要となり、相続税がかかる可能性があります。
この際の一般的な相続税対策としては、生前贈与・生命保険の加入・不動産の購入・賃貸不動産の経営等が挙げられます。
しかし、上記の行為は相続人の税負担を軽減するためのものであるため、成年後見人に被後見人の財産の保全に明らかに有益であると判断されない限り、このような相続税対策の実施は難しくなります。
申し立ての結果選ばれた成年後見人は、やむを得ない事由(転勤や病気など)がない限り、本人が亡くなるまで成年後見人であり続けます。
つまり、一度後見制度を利用すると、上記①~③のデメリットが本人が亡くなるまで続くことを意味します。
申立人が選任するよう希望していた親族が成年後見人に選ばれなかったからといって、申立てを勝手に取り下げることはできません。
申立ての取下げにも家庭裁判所の許可が必要ですし、そもそも本人の判断能力がない為にした後見申立ですから、よほどのことがない限り申立の取下げはできません。
また、親族と成年後見人のソリが合わないという話もしばしば耳にしますが、この場合でも成年後見人が本来の業務を全うしている限り、途中で辞めさせることもできません。
成年後見制度は本人の保護や支援に役立つ制度であると同時に、決して無視できないデメリットも併せ持っており、将来この制度を使うべきかどうかの見極めが難しいところです。
当法人ではご依頼者様の意向や取り巻く状況をお聞きした上で、認知症対策として後見制度を利用するべきか否か、また利用する際にも任意後見契約や見守り契約、財産管理等委任契約、死後事務委任契約などの最適な対策方法をご提案させて頂きます。
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