相続人以外に財産を遺すには?①~特定遺贈~ (2020.11.04)

以前のトピックスにて、相続人の順位等を取り上げてきました。
相続人がいない方の財産は、遺言等で承継先を指定していない限り、相続人不存在となり、国庫へ納められます。
これを回避するのに有効なのは、遺言書により、相続人以外の方へ財産を承継する方法です。
これを遺贈といいます。
※相続人がいる場合でも、相続人ではない方へ遺言を利用して財産を承継する事も遺贈といいます。
受遺者(財産をもらう方)は個人、法人問わず、自由に選択することができます。
遺言は契約や財産を渡す側・もらう側双方の合意を必要とせず、財産を渡す人の一方的な行為であり、これを法律上、単独行為と言います。
遺贈はその指定方法の違いにより「特定遺贈」・「包括遺贈」に分かれます。
今回のトピックスでは、「特定遺贈」に焦点を当ててご説明いたします。
特定遺贈とは遺言者が受け渡す遺産を特定する遺贈方法です。
「○○に、A建物を遺贈する。」など誰に何を渡すかを記載します。
ポイントは遺産のうち、どの財産が遺贈対象物なのか、具体的に特定できる必要があるということです。
したがって銀行預金であれば金融機関名、支店名、預金の区別(普通・定期・当座)など口座番号を明記します。
特定遺贈の場合は、遺贈者の借金などのマイナス財産を引き継ぐことはありません。
特定遺贈の場合、意思表示をすればいつでも放棄が可能です。
ただし、例えば特定遺贈の他に相続財産がある場合、受遺者の意思がいつまでもはっきりしないと相続人関係者は遺産分割ができませんので、相続人等の利害関係者は受遺者に対して特定の遺贈を承認するか放棄をするかの確認の催告をすることが可能です。
(『催告』とは、相手方に対して一定の行為を成すように請求する事を言います。)
ここで受遺者が決められた期間内に回答しない場合は、承認したものとみなすことができます。
また、一度行った承認・放棄は撤回できません。ただし、制限行為能力者、詐欺・強迫を理由として承認・放棄の意思表示を取り消すことはできます。
なお、遺贈にて取得した不動産は、3年10カ月以内に売却すると、譲渡所得税を軽減する事ができます。
いかがでしたでしょうか。今回は「特定遺贈」に焦点を当ててみました。
次回は「包括遺贈」についてご説明いたします。
冒頭でご説明しました通り、相続人がいない場合、何もしないでいると、ご相続発生時に、ご自身の大切な財産が国庫に流れてしまう事になります。
『お世話になった友人に財産を譲りたい。』『ライフワークとして活動していたボランティア団体に寄付したい。』等、当法人にも様々な想いを寄せられるご相談者様がいらっしゃいます。
遺言・遺贈のご相談は、目黒区学芸大学駅の司法書士法人鴨宮パートナーズまでお気軽にご相談ください。