遺言書で代償分割を指定する場合のメリットとは? (2021.04.14)

①代償金とは
②代償分割すべきケースとは
2.代償金の計算方法
①遺産の評価
②各相続人の法定相続分を計算
③代償金額を計算
④代償金の支払いを遺言書で指定する
3.遺言書で代償金による分割を指定すべきケース
①遺言書で代償分割を指定するための書式
②無効にならないよう、要注意!
以前のトピックスで、遺産分割の方法・遺言の書き方について触れて来ました。
今回は、遺言で代償分割を指定するメリットをご紹介していきたいと思います。
複数の相続人がいるときに不動産を1人の相続人へ相続させると、他の相続人との間で不公平が生じてしまいます。
相続争いのリスクが心配になるでしょう。
そんなときには「代償金」の支払いによって解決できる可能性があります。
遺言書で代償金の支払いを指定する際のポイントをまとめました。
そもそも「代償金」とはどういったお金なのでしょうか?
代償金とは、特定の遺産を相続する人が、遺産を受け継ぐ代わりに他の相続人へ払うお金のことです。
たとえば不動産を1人の相続人が相続して、他の相続人が何も受け取れなかったとしたら、他の相続人の法定相続分が無視されてしまい、他の相続人は不満を持つでしょう。
そこで、不動産を相続する相続人が、他の相続人の法定相続分に応じた代償金を払うことで公平に遺産分割を行います。
このように代償金支払いによって遺産分割する方法を「代償分割」といいます。
代償金の支払いによって解決すべきケースは、「分割できない財産」が残された場合です。以下の四つが代表例です。
・不動産
・株式
・車
・骨董品や絵画などの動産
こういったものは物理的に分割できませんが、一人が受け取って他の相続人へ代償金を払うと公平に分けやすくなります。
まずは遺産の評価を行います。たとえば不動産なら簡易査定を行って時価を算定しましょう。
車なら中古車サイトで相場を確認したりディーラーや中古車ショップに持ち込んで調べたりします。
上場株式なら株価を参考にして評価します。
非上場株式の場合、専門的な評価方法を適用しなければならないので税理士等に相談するのがよいでしょう。
次に各相続人の法定相続分を計算します。
たとえば子どもが3人で相続するなら、それぞれの法定相続分は3分の1ずつです。
法定相続分の結果を以下の計算式にあてはめると、代償金額を算定できます。
たとえば3,000万円の価値のある不動産が残されて長男が相続し、相続人は長男、次男、長女という子ども3人としましょう。
つまり、次男と長女へ支払うべき代償金額は1,000万円ずつ。
長男は次男と長女へそれぞれ1,000万円ずつの代償金を支払えば、公平に遺産相続ができることになります。
遺産相続が起こったら、基本的に相続人同士で話し合って遺産分割方法を決めなければなりません。
たとえば長男に土地建物を相続させたい場合でも、実際に子どもたちがどういった解決方法を選択するかはわかりません。
親の希望通りに長男が土地建物を相続して代償金を支払うかもしれませんが、子どもたちが合意して不動産を売却して解決する可能性もあります。
死後に不動産などの資産を確実に残してほしい場合、遺言書で代償分割を指定しておきましょう。
以下のような状況であれば、遺言書で代償分割を指定するメリットが大きくなります。
・不動産を売却せず、一人の相続人に引き継いでほしい場合
・一人に不動産を残したいが、そうなると他の相続人が不満をもってトラブルになりそうな場合
・遺留分請求権者が相続人に含まれる場合
遺言書で代償分割を指定する際の書式は下記を参考にしてください。
第〇条 遺言者は、遺言者の有する以下の不動産を、長男田中一郎に相続させる。
【長男に相続させる土地の表示と建物の表示】
第〇条 長男田中一郎は前条記載の相続に対する負担として、長女佐藤花子に1,000万円、次男田中次郎へ1,000万円をそれぞれ代償金として支払う。
遺言書を作成するときには、間違いのないようにくれぐれも注意しましょう。
不動産をきちんと特定できなかったり、相続人の表記を間違えたりすると、遺言書が無効になってしまう可能性があります。
不安があれば専門家に相談しながら遺言書の文面を書くのがよいでしょう。
いかがでしたでしょうか。
法改正により自筆証書による遺言がやりやすくなったり、ネット情報からそれらしい雛形を手に入れやすくなったりと、以前に比べれば個人の方が自力で遺言をするハードルは下がったように思います。
しかしながら、単純に相続人のうちの一人に遺産を相続させる旨を遺そうとするだけでも、その他の相続人同士の関係性や、万が一の遺留分対策など、様々な状況の想定をしていないと、実際に相続が発生した際に、遺言者が意図していない形になってしまったり、はたまた遺言を遺したことで相続人に思わぬ負担をかける事になってしまったりと、望まない結果になってしまう危険性も含んでいます。
少しでもご不安が残るような方は、やはり司法書士等の専門家に依頼して、公正証書で遺すことが確実と言えるでしょう。
当法人では、遺言コンサルティング、遺産分割方法の提案の出来る専門の司法書士が複数在籍しております。
是非一度、目黒区学芸大学の司法書士法人鴨宮パートナーズまで、お気軽にご相談下さい。