相続のキホン⑦ ~譲渡所得とは~ (2021.06.09)

『相続』という一言の中に、様々な法律や用語、考え方が登場します。
これまでに多くのトピックスを掲載しましたが、「そもそも、これってどんな考え方なの?」と疑問に思う方も、実は大多数いらっしゃるのではないでしょうか。
今回から不定期で『相続のキホン』とも呼べる法律や用語について取り上げていきたいと思います。
両親が亡くなり実家を相続したが、現状すでに空き家であったり、固定資産税がかかるため売却を検討される方もいるかと思います。
相続で不動産を取得すると、相続税がかかる可能性がある事は多くの人に知られてはいますが、実は不動産を売却した際にも税金がかかる場合があります。
今回は相続した不動産を売却する際の税金について、解説をしていきます。
不動産の売却により利益が発生した場合、その売却益を『譲渡所得』といい、税金がかかります。
譲渡所得は売却代金そのものではなく、売却代金から必要経費を差し引いた金額に税金がかかります。
ここでいう必要経費とは、
①売却した不動産の購入時の代金とかかった費用(取得費)
※相続と贈与で不動産を取得した場合、①を必要経費とする事が出来ます。
②売却にかかった費用(譲渡費用)
のことを指します。
この計算でマイナスとなった場合、譲渡所得税はかかりません。
土地の取得費については購入代金そのままで計算しますが、建物の場合、所有期間に応じて原価償却費相当額を差し引いた金額が取得費になります。
古くから持ち家などで取得費が分からない場合には、売却代金の5%を取得費とすることができます。
費用の詳細は以下のようなものがあります。
主な取得費
●取得の際に支払った仲介手数料
●契約書の印紙税
●取得の際の登記費用
●不動産取得税
主な譲渡費用
●契約書の印紙税
●建物取り壊しの費用
譲渡所得は、所有期間に応じて長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれます。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば、長期譲渡所得となり税率は20%、5年以下なら短期譲渡所得となり税率は39%となります。
長期譲渡所得と短期譲渡所得のいずれも復興特別所得税が上乗せされ、
短期譲渡所得:20.315%
となります。
譲渡所得には様々な特例が設けられておりますが、今回は相続に特有な特例をみていきたいと思います。
相続で空き家となった家を売却した場合には、譲渡所得の特例が設けられています。
被相続人の家を売却した場合で一定要件を満たしたときには、譲渡所得から3000万円を差し引くことができます。
この特例を『空き家の3000万円特別控除』といいます。
平成30年の調査では、総住宅の13.6%が空き家であるという調査が出ており、空き家の増加を防止するためこの特例が設けられました。
要件
②被相続人が亡くなる直前まで居住していた建物であること
③相続開始から売却の時まで、賃貸したり、相続人が居住したりしていない
④一定の耐震基準に適合していること又は建物解体後の売却であること
⑤売却代金が1億円以下であること
⑥配偶者や生計を共にする親族などへの売却でないこと
⑦相続開始から3年目の12月31日までに売却をすること
②について、被相続人が老人ホームなどに入居していた場合には、次の要件を満たせば対象とされることとの改正がされました。
●被相続人が要介護認定を受け、かつ相続開始直前まで老人ホームなどへ入居していたこと
●被相続人老人ホームなどに入居したときから相続開始の直前まで、その家が被相続人によって一定の使用がなされていて、かつ事業や貸し付け、被相続人以外の者に居住用に利用されていないこと
これはつまり老人ホーム等に入居はしているものの、被相続人がいつでも戻ってこられる状態にあったということが条件となっています。
いかがでしたでしょうか。
このように被相続人の不動産を売却する場合にも、いくつもの税金の知識が必要になってきます。
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