賃貸不動産と相続放棄 (2021.10.28)

過去のトピックスで相続放棄に関する論点を複数挙げて来ましたが、今回は賃貸不動産と相続放棄にポイントを絞りお話ししたいと思います。
相続放棄は、家庭裁判所に始めから相続人ではなかったことを認めてもらう手続きです。
ですので、相続放棄をするまでの間に下記の行為をしてしまうと、原則的には家庭裁判所は相続放棄を認めてくれません。
◆相続財産の処分(売却、取り壊し等)
◆遺産分割協議をすること
◆相続税申告をすること
◆準確定申告をすること
◆相続債務を支払うと債権者に言ってしまったり現実に支払ってしまうこと
上記は一部の例ですが、これらの行為は相続人としての通常の行為であり、自己が相続人であることを対外的に認める行為であるので、家庭裁判所は相続放棄を受理してくれないのです。
この前提で下記の相関図と基本情報をご覧ください。
≪基本情報≫ ※被相続人父、配偶者、子供のご家庭
①被相続人には消費者金融からの数百万の借金がある
②配偶者、子供は被相続人名義で賃借しているアパートに同居
③その他プラスの財産はなし
④賃貸管理会社から賃借人の更新手続きを迫られている
⑤家財道具は全て被相続人が購入
一見すると、借金さえなければ通常のご家庭なのですが、この状況下で相続放棄をする場合、非常に難儀な法的論点が待ち構えているのです。
④の賃借人の更新手続きです。
これを行ってしまうと、被相続人が契約していた賃貸借契約上の地位を相続してしまったことになり、預けていた敷金も相続したとみなされてしまうのです。
また⑤の家財道具ですが、経済的価値のあるものを廃棄したり売却したりそのまま利用し続けると相続を承認したものとみなされかねません。
前記の基本情報を前提に相続放棄をするのであれば、まず、賃貸借契約及び敷金は引き継がず、そこに住み続けたい意思があれば新たに配偶者、子供名義でオーナーと新契約を結ぶ必要があります。
もし、住み続ける意思がなく他に移転するのであれば、滞納家賃などは連帯保証人になっている場合を除き一切支払わず、家財道具は残置したまま退去するかトランクルーム等に現状維持のまま保管する必要があるでしょう。
家庭裁判所の相続放棄の手続きは、実体調査まで踏み切らないので比較的容易に手続きが完了します。
しかしながら、後日債権者から相続放棄をするに足りない事由があったとして、民事訴訟を提起され相続放棄の効果を覆されることもありえます。
相続放棄に関する考え方は、判例が非常に少なく判断が難しいところではありますが、当法人では相続専門チームを筆頭に日々あらゆる問題に対応しておりますので、お力になれることがあるかと思います。
お悩みの際は是非一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、お気軽にご相談下さい。