法定相続人とその見分け方 (2020.05.26)

相続が発生した場合、被相続人(亡くなった方)が遺言を残していない場合、相続人同士の話し合いによって遺産の分け方を決めることになります。これを遺産分割協議といいます。
この遺産分割協議には「相続人全員の参加」が必要です。そのため、相続人の方から相続に関するご相談をいただくと、司法書士等の専門家は戸籍謄本などを収集し、誰が相続人になるのかを一人ずつ確定していきます。
相続人は法律上一定のルールに従って決められており、これにより定められた相続人を「法定相続人」といいます。今回はこの法定相続人について解説いたします。
法定相続人とは、民法で定められた相続人のことをいいます。
なお、似た用語として、推定相続人というものがあります。こちらは、ある時点で相続が開始された場合に、相続人になると推定される人のことを指します。
被相続人の配偶者は常に相続人となります。
ここでの「配偶者」とは法律上婚姻関係がある者を指しており、内縁関係者は含まれていません。
また、死亡時点で婚姻関係にあれば、配偶者が別居していたり離婚調停中であったとしても法定相続人という扱いになります。
なお配偶者が被相続人より先に亡くなっている場合は、配偶者以外の相続人がすべての財産を相続します。
相続人には第一順位から第三順位までが存在し、以下のルールに従って優先順位が決定されます。
なお、単純な被相続人の血族だけに限らず、養親子関係も含まれます。
・第一順位‥子及びその代襲者(直系卑属)
・第二順位‥親、祖父母等の直系尊属
・第三順位‥兄弟弟妹及びその代襲者
【第一順位】
被相続人に子がいる場合、実子・養子に関わらず相続人となります。
【第二順位】
被相続人に子がない場合、直系尊属(被相続人の父母など)と配偶者が相続人となります。
被相続人と親等が近い者が優先されますので、父母と祖父母が健在の場合、父母のみが相続人となります。
【第三順位】
被相続人に子がなく、かつ直系尊属もない場合は、兄弟姉妹と配偶者が相続人となります。
下位順位の者は、上位順位の者「全員」がいない場合に限り、相続人となります。
よって、例えば子が相続人となる場合、被相続人の直系尊属や兄弟姉妹は相続人になりません。
相続開始時点において既に被相続人の子が死亡していたり、欠格事由や廃除によって相続権を失っている場合、「代襲相続」というものが生じることがあります。
例えば、祖父が亡くなった時点より前に相続人である父が亡くなっていた場合、その相続人の子(被相続人にとっての孫)が代襲者として相続人となります。(但し直系卑属である場合に限ります。)
更に孫も既に亡くなっていた場合はその孫の子(曾孫)が代襲相続人となり(再代襲相続)、理論上無限に続くことになります。
また、第三順位である兄弟弟妹に関しても、被相続人より先に亡くなっていた場合は、その兄弟弟妹の子らが代襲相続人となります。
但し、兄弟弟妹の子が亡くなっていた場合には、再代襲相続はおきません。
本来ならば法定相続人にあたる場合でも、下記の項目に該当する場合は相続人になりません。
本来ならば法定相続人にあたる者が相続放棄をした場合、その相続に関しては、最初から相続人にはならなかったものとしてみなされます。
なお、相続放棄をした場合、代襲相続はありません。(そもそも相続放棄をする=相続人が生存しているので、代襲相続は起こりません。)
民法の定めによる一定の事由(欠格事由)に該当する場合、相続人となることが出来ません。
(例)
・故意に被相続人または相続について先順位・同順位にある者を死亡に至らせた、または至らせようと謀ったために刑に処せられた者(交通事故など「過失」と認められた場合は該当しない。)
・詐欺や脅迫などにより、生前の被相続人に遺言をさせた、または遺言の撤回・変更・取り消しをさせた者
・被相続人の遺言書を偽造・破棄・隠匿した者
(なお、遺言書によって本来は全て自分が相続するはずだった相続財産を、遺言書を隠し法定相続分通りに相続する事にした、など相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったと判断され、欠格者に当たらないとされた判例があります。)
などが挙げられます。
遺留分を有する推定相続人(相続発生前だが、相続人となると推定されている者)が、被相続人に対し虐待をするなどの著しい非行があったとき、家庭裁判所に推定相続人の廃除(相続権をはく奪すること)の請求申立をすることができます。
なお、この請求をできるのは被相続人本人のみとされています。(他の推定相続人からの請求申立はできません。)
次回トピックスでは具体的な法定相続分の割合について取り上げていきます。
法定相続人については、当法人にご相談されたお客様でも、ご自身で事前に調べた上で相続相談にいらっしゃるケースも比較的多いのですが、意外と間違ったご認識をされている方が多いのも事実です。
些細な点が後々問題となり、遺産分割協議をやり直さなければならなくなった、という方もいらっしゃるようですので、一度専門家にご相談する事をお勧めいたします。