遺産相続と生命保険の関係 (2020.06.04)

遺言に関するトピックスにて、遺留分と生命保険の関係性について取り上げ、生命保険に加入することが相続対策、争続対策に有効であることをご説明させて頂きました。
今回は、相続と生命保険をテーマに、一般的な税務上の考え方も含めて、お話しをさせていただきます。
まず、原則として、生命保険金(死亡保険金)は受取人の固有財産とされ、遺産分割の対象とならないことから、基本的には相続財産に算入されません。
また、受取手続きも銀行預金等の遺産相続の手続きとは違い、受取人自身のハンコのみで手続きが出来るのが大きな特徴です。
但し、税法上はみなし相続財産という考え方が存在し、ある一定の金額以上の生命保険金は、税務上相続財産とみなす決まりとなっています。
前記の相続財産に算入されない生命保険金の限度額は、相続人一人当たり500万円までとなっています。
これを、「生命保険金の非課税枠」と言っていきます。
例を基に、生命保険金がおりてきた場合に非課税枠がいくらまで認められるかを考えてみましょう。
上記の家族関係であれば、相続人一人500万円まで非課税となりますので、最大で2000万円までは、相続財産にカウントされないこととなります。
預貯金も生命保険金も、故人の死亡に伴って遺族に支払われる金銭という意味では性質は全く同じなのですが、受取手続きや課税の観点から考えると全く性質を異にします。
相続財産のほとんどが自宅不動産といった場合には、相続税の納税の為には自宅不動産を売却するか物納するしか方法はありません。
また、相続税がかからないご家庭であっても、相続財産が自宅不動産しかなく、相続人同士で遺産分けに関する合意が難航する場合は、やはり自宅不動産を売却し、売却代金を法定相続分通り分配するなどの方法(換価分割)を検討しなければならないでしょう。
生前に生命保険を組んでその受取人を特定の相続人、または相続人全員にしておく事ができれば、前述した納税資金や代償金の資金対策はもちろん、預金から生命保険に組み替えた額だけ相続財産を圧縮する事になり、節税対策になります。
実務で相続手続きをやっていると、依頼者様から『生命保険の手続きだけど、証券を持っているからいつ手続きしてもいいのよね?』としばしばご質問があります。
残念ながら、答えは”No”です。
生命保険金の請求権は、権利発生日の翌日から起算して3年で時効により消滅してしまいます。(保険法第95条)
生命保険の受給権が発生しているのに、何もせず放置していると、3年後には、その保険証券はただの紙切れと化してしまいます。
(もちろん、3年経過後に保険会社が時効であることを主張しないケースもあるようです。)
この事実を知らない方は意外と多く、実際にとあるご相談の最中、『別の司法書士さんに聞いたら、「保険金はいつ請求してもいいですよ。別に期限はありませんから。」と言われたんですけど。』と言われたこともあります。
保険法は、司法書士試験の試験範囲では無い為、一般の登記を主とする司法書士事務所では、上記のような誤った回答をしてしまうケースがあるようです。
相続を専門としていて、日頃の実務で生命保険の手続き対応が絡んでくるかどうか、専門家を選ぶ時の一つの基準にしてもらうと良いでしょう。
いかがでしたでしょうか。
『相続が発生したら、この土地を処分して相続税の納税に充てよう。余ったお金は相続人のみんなで分配しよう。』といった具合に初めから計画していればいいのですが、どうしても土地を減らしたくないとか、自宅を相続する代わりに他の相続人に代償金を支払う資力がないといった場合には、生命保険金が入ってくることは非常にありがたいものです。
当法人では、遺言のご相談を受けた場合はもちろんのこと、相続の相談で故人に配偶者がいる場合には、二次相続も睨んで相続対策としての生命保険加入等のご提案もさせて頂いております。
まずは、お気軽にご相談下さい。