遺留分制度の見直し (2020.06.23)

以前のトピックスで、遺留分について取り上げ、遺言書を書く場合に注意する点や、生命保険を使った相続対策をご説明させて頂きました。
今回は、2019年7月施行の法改正により遺留分制度の見直しがされたことについて、改正のポイントについて見ていきましょう。
今回の遺留分制度の改正の中で最も重要なポイントが、「遺留分の権利が金銭債権化」されたというところです。
「遺留分の権利が金銭債権化」されたとはどういうことでしょう。
簡単に言うと、遺留分として請求できる権利(=対象)がお金に限定されたということです。
それによりどう変わるのか下記事例で見てみましょう。
父が「長男に全ての財産を相続させる」という遺言を残して死亡。相続財産に不動産と預貯金があり、次男が自分の遺留分を主張して長男に請求をする。
「遺留分減殺請求権」とは遺留分を侵害された人が「遺留分に相当する財産を下さい」という一方的な意思表示により法律効果が発生する「形成権」という権利(この点は新法でも変わらないといわれます)です。
そのため、減殺請求の意思表示をすれば、当然に相続財産が共有になってしまいます。
共有状態になると、その状況の解消には長男次男でさらに話し合い、まとまらなければ訴訟等で共有物分割等をしなければなりませんでした。
新法では、遺留分の権利を主張した場合、不動産の持分等ではなく金銭での支払い請求になったため、不動産が共有にならず、共有解消での争いを回避できることになります。
(もちろん、侵害額を長男が支払わなければその点については争いになります。)
そして、2つ目のポイントは、遺留分を算定するための財産(遺留分額を決めるための基礎となる財産)について、一定の限定がされました。
1.相続開始時の財産
2.相続開始前1年内の贈与
3.贈与当時に贈与者・受贈者の双方が遺留分を損害を与えることを知って行った相続開始前1年より前の贈与
4.特別受益に該当する贈与
「特別受益に該当する贈与」とは、婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として行った贈与のことで、簡単に言うと遺産を先に渡すような意味合いのものです。
旧法では特別受益に当たる贈与はその時期を問わず、遺留分の算定するための財産に入れて計算されていました。
1.相続開始時の財産
2.相続人以外に対する、相続開始前1年内の贈与
3.贈与当時に贈与者・受贈者の双方が遺留分を損害を与えることを知って行った贈与
4.相続人に対する、相続開始前10年内の特別受益に該当する贈与
法改正により、相続人に対する贈与は、1年内の贈与であっても特別受益に該当しない限り、遺留分を算定する財産には加算されなくなりました。
また、相続開始前10年より前にされた贈与は特別受益に該当するものであっても遺留分を算定する財産には加算されなくなりました。
いかがでしたでしょうか。
実際に遺留分が侵害されているか、侵害されているとしたらその侵害額はどれくらいか、侵害請求はどのようにしていくのかの判断は非常に難しいところになります。
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