疎遠な相続人との遺産分割調整 (2020.09.15)

前回までのトピックスで、遺産分割の方法等を取り上げました。
遺産分割の方法には、具体的に現物分割・代償分割・換価分割がありますが、今回は実務上良く使われる代償分割の方法を、事例を交えてご説明していきます。
下記の相続関係図をご覧ください。
上記の関係図は、相続を専門に扱うとしばしば目にする関係図ですが、この関係性において、司法書士が相談を受けるのは後妻たる配偶者からです。
この場合、よくあるご質問が、
②『全く面識がないので全てそちらでお話合いしてもらえませんか?』
③『全て私が相続する内容で交渉してもらえませんか?』
です。
上記①は、前妻の子も法定相続人である以上、その子の協力なしで手続きすることは一切不可能と言えます。
②と③は弁護士に数百万円(時には数千万円)の報酬を支払えば可能と言えますが、相手方である前妻の子にも法定相続分がある以上、敏腕弁護士が入ったとしても、希望通りの結果が待っているとは限りません。
むしろ、疎遠になっている前妻の子としては、大抵の場合、養育費を長年支払ってもらっていないなどの不満等もあり、逆に必死に交渉をしてくる傾向があり、簡単に交渉がうまくいかないケースが多いといえます。
司法書士は、弁護士と違い、遺産分割についての交渉代理権がありません。
また、いきなり弁護士名義での手紙が届くなどすれば、感情面での折り合いがうまくいかないことが多々あります。
ですので、原則はあくまでご本人が交渉のテーブルにつき、遺産分割方法を提示した手紙を書いて相手方の意向を確認する必要があります。
しかし、多くの場合、遺産分割方法を知らない、法定相続分の説明が出来ない、法的要素を踏まえた伝わりやすい手紙の書き方が分からない等、一般の方にはハードルが高すぎると言えます。
この事案に置いて、当法人の司法書士は、後妻の立場、前妻の子の立場に立って下記のような方法で、解決に導いて行きました。
まず、この事案に置いて一番重要なのが、相手方(前妻の子)の法定相続分に配慮することが一番大事で、上記の相関図から前妻の子の法定相続分は8分の1と計算できます。
次に遺産の範囲が、何かを具体的にヒアリングします。
遺産には、不動産・現金・有価証券・預金・動産(自動車等)が含まれます。
この事案では、不動産・預貯金・自動車が主な遺産であり、不動産については固定資産税評価証明書、預貯金は残高証明書、自動車は査定書を取り付け、全てを遺産目録に反映し全財産を金銭に見積もった額を算出しました。
後日、残高証明書等全ての資産のエビデンスを付けた遺産目録を付けた上で、後妻と当法人連名での手紙の文案を考案し、前妻の子の住所に送付しました。
この事案では、財産を全て開示し、法定相続分の主張があれば全て代償金でお支払いをする(代償分割の提案)旨の手紙を送ったところ、前妻の子も誠意を感じ、すんなりと円満に遺産分割協議が成立しました。
遺産相続に不慣れな司法書士事務所がやってしまいがちな、手紙の文案作成の手法として、遺産を開示せず『相続についてご意向如何でしょうか?』といった内容で、ざっくりとした文案を考案することが散見されます。
この場合、十中八九、『遺産を開示してほしい。法定相続分はいくらまで主張できるのか。』など、初っ端から相手方の不信感をあおり円満な解決が見込めないことが多いです。
円満な遺産分割協議が出来ない場合、家庭裁判所において遺産分割調停・審判に進むこととなりますが、調停・審判でも全ての遺産を調査し、目録に反映して申立していくこととなり、当然相手方にも家庭裁判所を通して、遺産目録が開示されることとなります。
やはり、一回目の意向確認の段階から、相手方の法定相続分に配慮してご説明し、遺産分割方法を提案していく方が後々の裁判手続きに置いても有用に働くと言えます。
司法書士は中立公正を保ち、終局的な、調停・審判を見据えた手紙の文案を考案する必要があります。
当法人には、相続専門チームが設置されており、日々あらゆる遺産分割を模索してお客様を解決に導いています。
まずは、お気軽にご相談下さい。