会社の代表取締役が認知症になってしまった場合の手続き | 目黒区 | 司法書士法人 行政書士法人 鴨宮パートナーズ

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会社の代表取締役が認知症になってしまった場合の手続き (2020.12.03)

 

 

日本の高齢者人口は増え続けていて、その点は会社の経営者についても例外ではありません。

経営者が認知症になってしまうと、経営の判断の質が低下したり、言動から取引先の信用が低下してしまう、などの弊害が生じます。

場合によっては経営者の意思能力が無いと主張され、契約の効力を争ってくる可能性もあります。

このような場合、他の取締役等は、どのように手続きをしていくべきなのでしょうか。今回はこちらのテーマで書かせていただきたいと思います。

 

 

≪こんな場合、どうする?≫

 

 

A株式会社の代表取締役はB、取締役はBの息子であるCが登記されています。

普段からBは、「近頃物忘れがひどくなってきたので、会社の経営は息子であるCに任せている」旨を、取引先にも公言していました。

しかし、代表取締役はBの状態のまま、Bの認知症が悪化してしまいました。

 

この場合Cはどうしたらいいでしょうか。

 

 

①代表取締役Bを解任する

まず考えていくのが、このままですと会社経営にリスクがありますので、代表取締役Bを解任する手続きを取っていくことが考えられます

株主総会にて「取締役」Bの解任(代表取締役資格は自動的に失う)をしていくか、仮に取締役会を置いている会社でしたら、取締役会にて「代表取締役」の資格のみ先に解任することも可能です。

しかし、取締役会にて取締役の意見が一致しない可能性もあります。

また、株主総会においても、中小企業などの場合、株式の大多数を代表取締役が持っていることも多いため、代表取締役であるBが議決権を行使した多数の票に意思能力の問題が残り、後になって株主総会の決議自体の効力が争われてしまう恐れがあります

 

 

②法定後見制度を使う

上記①のような手続きには、不確定的部分がどうしても生じてしまします。

また、仮に経営する会社関係の問題をクリアしたとしても、その他の私生活においての問題が残ります。

預貯金が下せなかったり、不動産の売却や、施設の入所契約ができない等の問題は解決されません。

そこで、Bについて成年後見の申立を行うという方法が考えられます。

CはBの息子ですので、成年後見の申立を行うことができます。

代表取締役が成年被後見人となった場合には、取締役としての資格を自動的に失います(会社法331条の取締役欠格事由)ので、上記①で述べた手続きが確定的なものとなります

その後は、後見人に選任された者が、Bに代わって議決権を行使し、新たな代表取締役を選定していくことになります。

 

取締役会を置く会社では、Bを除く構成員による取締役会によって、新代表取締役を選定していくことになります。

また、必要に応じて株式の譲渡等を行い、経営権を承継していくことになります。

しかし、後見人に選任される者は、経営のプロではありませんので、適切な取締役を選ぶことができるとは限りません

また、後継者について社内に争いがある場合には、正式な代表者が定められない状態が続いてしまうリスクは依然として残ってしまいます。

 

 

③任意後見制度を使う

法定後見制度は、認知症になってしまった場合の制度ですので、既に認知症を発症してしまうと、法定後見制度を利用する以外の方法が無くなってしまいます

今回取り上げた例のように認知症が悪化してしまう前に、起こりうることに備えて他の方法によって準備することはできます。

例えば暦年贈与によって株式を後継者に移譲しておく民事信託の契約をしておき、後継者を決めておく等も考えられますが、任意後見契約を結んでおくという方法もご紹介できればと思います。

 

任意後見契約では、まだ本人に意思能力があるうちに、認知症になってしまった場合に備えて、信頼できる者を後見人に指名し、予め契約を結んでおきます

本人が認知症になってしまった場合は、後見監督人のもとで、後見人が本人の代わりに権利を行使し、適切な取締役を選任することになります

 


認知症はいつ発症するかわかりません。そして、発症してしまうと取りうる手段が限られてきてしまいます。

備えられるうちに、できるだけ早めに対策を講じておくことで、安心して経営できる状態を作っておくことが望ましいといえます。

司法書士法人鴨宮パートナーズでは、様々な制度を選択肢として検討し、ご本人の状態等も考慮しながら、最適な利用方法のご提案をさせていただきます。

このようなお困りごとがございましたら、是非一度お気軽にご相談ください。

 

 

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