配偶者居住権と遺産分割又は遺産分割対策 (2020.12.08)

以前のトピックスで、令和2年4月1日施行による改正民法のうち、配偶者居住権の概説をしました。
配偶者居住権を利用した相続対策には、主に以下の2点が挙げられます。
②配偶者居住権を使った節税対策
今回は、①の配偶者居住権を使った実際の遺産分割対策についてお話をしてみたいと思います。
下記の相関図をご覧ください。
【例】後妻と前妻の子3人は反りが合わず、前妻の子らは被相続人または遺言者の父が亡くなった暁には、実家に住んでいる後妻に退去してもらおうと考えている。
上記の図で、従来の民法で後妻に居住権を与えようと考えた場合、遺言で不動産を相続させる旨の遺言を書いて所有権を帰属させるか、本人の死後に相続人同士で遺産分割において後妻に所有権を帰属させる方法しかありませんでした。
通常、不動産の所有権は評価額が高く、遺言の場合だと他の相続人の遺留分を侵害してしまいトラブルになるケースが散見されます。
また、遺産分割の方法だと後妻が所有権を取得してしまうことにより、不動産のみで法定相続分2分の1のウェイトを占めてしまうため、他の預貯金等の金融資産を取得できないことが良くありました。
一方で、改正民法の配偶者居住権を後妻に帰属させていくと、一般的に配偶者居住権は所有権のうち、無償で使用収益のみ有する権利(売却等処分権限がない)であり評価額が圧縮され、後妻にとっては有利な遺産分割対策になると考えられています。
また、遺言で配偶者居住権を設定した場合でも、元本所有権を前妻の子に取得させ、配偶者に居住権のみを取得させる関係上、遺留分侵害対策にもなり得ます。
他にも、配偶者居住権は、前記の相関図において、遺産分割・遺言をする場合絶大な効果を発揮することがあります。
例えば、前妻の子たちは自分たちの実家が後妻に相続された後、後妻の前夫の子に相続される事を危惧している場合や、後妻は夫の死後も自宅に住むだけで充分であり、自分が亡くなったら自宅を前妻の子たちに返そうと思っているが、互いになかなか素直に話し合いが出来ない場合が挙げられます。
配偶者居住権は配偶者の一身専属性のものである為、後妻の連れ子に相続させたり、売却することは不可能であり、後妻の死亡時点で消滅するので、それぞれの相続人の希望を叶えることができると言えます。
いかがでしたでしょうか。
今回のトピックスと併せて、配偶者居住権を使った節税対策のトピックスも是非ご覧ください。
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