相続放棄と相続人の管理責任 (2021.05.12)

これまでに様々なトピックスで、相続放棄について取り上げて来ましたが、今回は相続放棄をしても残る相続人の管理責任にポイントを絞って、解説をしていきたいと思います。
相続放棄をすると、固定資産税等の税負担、債務弁済等一切義務を負わなくなります。
しかし、建物が倒壊したり、ごみの放置で近隣住民に損害を与えた場合は、民法上の管理責任を負うことになるので注意が必要です。
もちろん、相続財産である建物の解体処分や売却等の処分行為をしてしまうと相続放棄をすることは出来なくなります。
賃貸人から賃借人(被相続人)の相続人に、建物明け渡しの為の家屋内の動産類の撤去や滞納家賃の支払い、水漏れによる損害賠償、賃貸借契約の解除を求められることがしばしばあります。
これらの行為をしてしまうと、民法上の法定単純承認に該当すると見なされる場合がありますので慎重な判断が必要となります。
これについては、「経済的に価値のない家財等であれば法定単純承認にあたらない」という下級審判例がありますが、経済的に価値のない家財であるという判断は簡単ではないので、慎重な行動をするべきでしょう。
相続放棄を検討しているのであれば、原則、専門家に相談するまでは遺留品には一切手を付けない等の選択も必要となってきます。
もしも、賃貸人とトラブルを回避するためにやむなく家財道具の撤去をする必要がある場合は、一時保管という建前で撤去前の状態を写真で撮影し、保管場所の状況も写真等で残しておくことをおすすめします。
なお、法定単純承認の処分とは、動産類に限って言えば、廃棄・取得・譲渡を指しますので現状維持のままで保管していきましょう。
また、動産類の撤去を急ぐ特段の理由がない場合は、一旦相続放棄を申立て、相続放棄申述受理通知書が届いた段階で撤去をすることも一つの手段と言えます。
これらの行為をしてしまうと、法定単純承認に該当してしまう可能性が高くなりますので注意が必要です。
特に契約の解除行為は、相続人の立場においてしかできませんので、解除に応じた時点で相続放棄は出来なくなってしまいます。
賃貸借契約の連帯保証人となっている場合は、残念ながら賃貸借契約から生じる債務を回避出来ないので支払いは免れません。
しかし、被相続人に他にも債務がある可能性がある場合、相続放棄を検討する余地があり、一旦賃貸借契約上の債務については、連帯保証人の地位において本債務の支払いをする等の明確な意思表示をした上で、相続放棄をすることをお勧め致します。
なお、相続人ではないが賃貸借契約の連帯保証人となっているケースの場合、相続人全員が相続放棄をし、家賃を支払う人が誰もいなくなってしまうと、延々と滞納家賃の保証をしなければならないという不都合なことが起きてしまいます。
いっそのこと契約解除をしたいところですが、相続人でない連帯保証人は契約の当事者としての地位を有していないため、解除は出来ません。
その場合、相続人不存在を理由として相続財産管理人の選任を申立て、相続財産管理人と賃貸人との間で合意解除をしてもらう必要が出て来ます。
この様に相続放棄には、多種多様な考え方を応用して慎重に判断しなければ取返しのつかないことになりかねません。
当法人では、相続放棄にあたる場合、専門チームが対応し様々な文献から判例の考え方を引用し、最適な提案をさせて頂きます。
お困りごとがございましたら是非一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、お気軽にご相談ください。