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自筆証書遺言と物件の同一性 (2020.07.31)

自筆証書遺言と物件の同一性

 

 

 

≪目次≫
1.検認を受けた遺言が使えない?!
2.財産等の特定方法
3.問題点
4.遺言の内容が不明確な場合の基本的な考え方
5.対応方法

 

以前のトピックスで、自筆証書遺言について取り上げました。

⇒【遺言の種類と書き方~自筆証書編~】
⇒【遺言書の検認】

 

公正証書遺言と法務局で保管された自筆証書遺言(令和2年7月10日より保管制度開始)以外の遺言書は、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。

遺言書の検認を受けていなければ、不動産の名義変更登記の申請、預貯金解約等の相続手続きをすることができないからです。

しかし実のところ、検認を受けたからといって、その遺言書を使って不動産の名義変更等を行えるとは限りません

遺言書の記載内容が明確でないために、遺言書だけではその内容を実現できないケースがしばしば見受けられるのです。

今回は、そのような事例を1つ紹介いたします。

1.検認を受けた遺言が使えない?!

 

≪事例≫
相続人からの遺言書に関するご相談で、お亡くなりになった方は生前に自筆証書遺言を作成していました。
遺言書はすでに検認手続き済みとのことです。

遺言には「自宅はAに相続させる」「別宅はBに相続させる」と記載されていました。

住所などの記載はないものの、以前よりお亡くなりになった方から遺言内容を聞いていたため、相続人の間では対象物件がどれになるのか合意済みで、特に争いはありません。

しかしこの事例、遺言書に基づく不動産の名義変更について、事前に登記所に照会をかけたところ、受理できないとの回答を受けました

いったいどういうことなのでしょうか?

 

2.財産等の特定方法

不動産の名義変更を登記所に申請する場合、対象となる物件を正確に特定しなければなりません。

今回のケースであれば、登記簿謄本の記載に従って、少なくとも

●土地なら所在、地番
●建物なら所在、家屋番号

を遺言書に記載する必要があります。

これらの情報を知るには、不動産ごとの登記簿謄本の確認が必要です。

 

3.問題点

上記で挙げた情報がないと、遺言書で書かれている不動産と、名義変更の対象となる不動産が同じ物件なのか登記官が判断できず、遺言書を使って不動産の名義変更することができないといった不具合が生じます

しかし、ご自身で作成する自筆証書遺言の場合、こういった形式的な事情を知らずに住居表示(=住所)で記載されることが多く、この住居表示と対象物件の所在・地番等が同一の物件であることを申請者側で示さなければなりません

今回の遺言書では「自宅」「別宅」としか記載されていないため、まずはその所在等を明らかにします

また、ここでいう自宅・別宅とは建物だけなのかそれとも敷地である土地も含むのかも併せて検討が必要となります。

 

4.遺言の内容が不明確な場合の基本的な考え方

遺言書の内容が不明確な場合、特定の条項の解釈をどのように行うべきか、下記の最高裁判例があります。

≪最高裁判決 昭和58年3月18日≫

遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し、当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。( 一部抜粋 )

なんだか難しい表現ばかりで解りづらいですよね。

要約すると、『遺言書の特定の部分が不明確であった場合、杓子定規に文言の字面だけで判断するのではなく、遺言書の全体との関連性や諸事情を考慮することも認めていますよ』という事なのです

よって、内容が不明確な遺言がある場合には、この判例を前提として検討する必要があります。

 

5.対応方法

遺言書・対象不動産の登記簿謄本・お亡くなりになった方の戸籍附票謄本などを集め、各不動産の所在地を管轄する登記所に事前相談を行います。

この際、遺言の対象となる不動産と、名義変更の対象として提示した不動産が同じものかどうかの判断は、登記官に委ねられます

よって、案件によって、相続人全員の署名・実印済み上申書(印鑑証明書付き)の追加提供を求められたり、遺言書による名義変更を受け付けてもらえないといったことが起こるのです。

自筆証書遺言はご自身だけで気軽に書けるメリットがあります。

しかし、作成時に適切なサポートがないと、ご自身の想いを望んだ形で遺せないという大きなデメリットも存在する、といった事例でした。

 


いかがでしたでしょうか。

上記のような事例はほんの一例であり、実際には検認手続きをするまでもなく無効と判断されてしまった件や、登記には問題なく受理されたが、金融機関の解約手続きでかなり危うい状況に陥りそうになった件(最終的には何とか受理されましたが、個人でお手続きされていたらまず突っぱねられていたでしょう。)なども、実は多く見受けられます。

大切なご遺産を確実な形で遺したいとお考えの方は、まずは専門家へご相談する事をお奨めいたします。

遺言をお考えの方は是非一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまでお気軽にご相談ください。

 

 

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