相続人の中に未成年がいる場合の相続手続き (2020.05.19)
前回までのトピックスで、海外在住の相続人が外国籍を取得している場合を取り上げました。
今回は相続人の中に未成年者が含まれる場合について取り上げます。
遺産分割協議には全ての相続人が参加する必要があります。しかし、相続人が未成年者の場合、その人は遺産分割協議に参加することができません。
このような場合、誰が代わりに参加することになるのでしょうか?
未成年者が財産に関する法律行為をおこなう場合、原則親権者が未成年者の法定代理人となります。
しかし、未成年者と親権者との間で利害が対立する場合(これを「利益相反」といいます)、その行為について親権者は法定代理人になることができません。
遺産分割協議も財産に関する法律行為になりますので、通常は親権者が代わりに参加します。
しかし、未成年者とその親権者がともに相続人である場合、双方の間に利益相反が生ずると判断されます。
その結果、親権者は遺産分割協議に参加することができません。
そこで、親権者の代わりに遺産分割協議に参加する人を定める必要があります。
特別代理人とは、家庭裁判所で決められた手続きのために特別に選任される代理人のことです。
未成年者の親権者と違い、決められた手続き以外の代理はできず、当該手続きが終われば任務は終了します。
相続手続きに関しては、
・遺産分割協議書への署名押印
などを代理人として行います。
特別代理人になるにあたり、特に資格は必要ありません。
そのため、実務上は、親権者や未成年者との間に利害関係がない親族(祖父母、叔父・叔母など)が選ばれることも少なくありません。
ただし、特別代理人の候補として届け出た人が適任でない場合、家庭裁判所によって司法書士などの専門家が選任されます。
いかがでしたでしょうか。
遺産分割協議に特別代理人の参加が必要となる場合、予め特別代理人を選任する必要があります。
家庭裁判所との打ち合わせなど事前準備に時間がかかりますので、このようなケースに当てはまる場合は、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズに、まずはお早めにご相談ください。
遺産分割協議と行方不明者 (2020.04.20)
相続のお手続きは、各ご家庭の置かれている状況、家族構成やその関係性によって変わってくることがあり、同じ事案というのは一つとしてありません。
今回は、「相続人の内の1人に行方不明者がいる場合の相続手続き」をテーマにご説明をしてみたいと思います。
故人が遺言書を残されていない限り、故人の遺産は、故人がお亡くなりになった瞬間に、自動的に各相続人に法定相続分通りに帰属していき、共有状態となります。
下記の例を参照してください。
故人死亡後、自動的に遺産(不動産、預貯金、株式等)のすべてについて、妻2分の1、長男4分の1、長女4分の1、と法定相続分通り帰属し、共有状態となってしまいます。
この法定相続分通りの共有状態を解消する(例えば、一切の遺産を妻が取得する)為のお話合いを、法律上、遺産分割協議と言っていきます。
遺産分割協議は、相続人全員で合意をしさえすれば、法定相続分の規定に関わらず、どういった分け方でも自由に出来ます。
実際、妻が一切の遺産を取得するといったケースは、実務では多く見受けられる遺産分割のパターンです。
ところが、今回のテーマのように、相続人の内の1人が失踪して行方不明となっている場合は、そうは行きません。
この場合、遺産分割協議を実現していく為に、行方不明の相続人を『不在者』と位置づけ、当該不在者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に『不在者財産管理人の選任申立』をしていかなければなりません。
家庭裁判所に選任された不在者財産管理人が、行方不明者の法定代理人として遺産分割協議に介入し、他の相続人と遺産分割協議を成立させていくのですが、、、
この不在者財産管理人の選任申立、意外と厄介な手続きなのです。
民法上、『不在者とは、従来の住所又は居所を去って、容易に帰来する見込みのない者』を指しますので、申立段階ではこの事実を疎明していく事に重きを置いていきます。
家庭裁判所に提出する資料としては、
●利害関係を証する資料
●不在者の戸籍謄本及び戸籍の附票
●財産管理人候補者の住民票
●不在の事実を証する資料
●財産目録
等がありますが、上記のうち取得・作成するのが一番難しい資料が不在の事実を証する資料です。
家庭裁判所が、行方不明者を不在者と認定し、行方不明者の為に財産管理人を選任すべきか否かを判断する為の、最重要資料と言っても過言ではありません。
不在者の住民票や戸籍の附票等の役所発行の住所証明書の住所欄が、職権消除されているときを除き、まずは不在者の住民票上の住所に手紙を送り『あて所に尋ねあたりありません』といった郵便局のスタンプを残していきます。
次に、確実に不在者が住民票上の住所にいないことを確認する為、現地に赴き現地調査(別人の居住の有無、生活感があるか否か、ガスメーター等の作動状況、表札等の確認)をしたうえ、現地写真付きの調査報告書を作成して提出し、裁判所を納得させていきます。
不在者の親族の方や隣地住人の方等、行方不明者が不在になったいきさつを知っている方がいれば、その方にも陳述書を書いてもらい、裁判所を納得させるのも一つの手段となります。
晴れて、不在者財産管理人(弁護士・司法書士が圧倒的に多いですが、相続人とならない親族を候補者として申立をしている場合であって遺産が少ない場合は、その親族が管理人に選任されるケースもあります。)が家庭裁判所から選任されると、当該不在者財産管理人と他の相続人様との間で、遺産分割協議をしていきます。
しかし、不在者財産管理人が選任されたケースでは、前述のような柔軟な遺産分割協議(妻が一切の遺産を取得する等)を成立させることは原則困難となります。
不在者財産管理人は、全体の遺産に対する不在者の法定相続分を確保した遺産分割協議でなければ、判を押してくれないのです。
代償として、法定相続分通りの金銭を支払うケースが一般的です。
まれに、遺産分割協議書に『不在者が帰来・出現し、請求された場合は、相続人●●は不在者△△に金〇円を支払うものとする。』との帰来時弁済型の遺産分割協議が、不在者財産管理人及び家庭裁判所に認められる場合がありますが、これは下記のような一定の要件を勘案し、その他すべての事情を総合考慮した上で、帰来時弁済型の遺産分割協議をしても問題ないと家庭裁判所に判断された場合のみに限られます。
●不在者の年齢や帰来可能性の有無
●遺産総額に対する不在者の法定相続分が100万円程度であるか否か
故人が亡くなったら妻が全ての遺産を取得するはずで、長男長女も納得していたけれど、故人の死亡前に長男が失踪して行方不明になった、等のケースでは、上記のような帰来時弁済型の遺産分割を認めて貰いたいものです。
なお、上記要件の内、不在者が取得すべき法定相続分が100万円程度であるか否か、という判断材料はあくまで指針ですので、実務上200万円~400万円でも帰来時弁済型の遺産分割が認められたというケースは多々あります。
不在者財産管理人選任における現地調査や調査報告書の作り方、遺産の調査、申立後の帰来時弁済型遺産分割の許可の見込み等は、高度な専門性とノウハウが無ければアドバイスが出来ません。
各種裁判所申立、各種遺産分割に関与してきた当法人のノウハウを活かせば、具体的事情をヒアリングした上、今後の遺産分割の見通しをつけることも可能な場合があります。
渋谷区、目黒区学芸大学の司法書士法人鴨宮パートナーズまで、是非一度お気軽にご連絡ください。