相続手続きと株式実務① (2020.04.24)
過去のトピックスで、相続手続きと銀行実務を取り上げました。
今回は、相続財産に株式がある場合の実務を取り上げてみましょう。
株式には上場株式と非上場株式の2種類がありますが、今回は上場株式の場合を取り扱います。
故人の遺品を整理していると、預貯金通帳の他に、株式に関係する書面が出てくることがあります。
しかし、預貯金通帳と比べて、株式に関係する書面は、普段、目にすることが多くありません。
また、書面の名称や発行する金融機関も様々であるため、株式投資をなさったことがない方にとっては、これらの書面が株式の相続にどう関係するのか、非常に分かりづらいものとなっています。
そこで、株式が金融機関でどのように管理されているのか、株式の相続手続きについて触れたいと思います。
まず、上場株式の管理方法には、以下の2パターンが存在します。
②信託銀行の特別口座で管理されている場合
上記②を見て、「え、株式って証券会社で管理するものじゃないの?」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、上場株式に関しては、平成21年1月5日に株券の電子化が行われ、株券は廃止となりました。
この際、従来の株券の保管方法等に応じて、以下のように管理方法が変更となっているのです。
●株主が株券を証券会社に保護預りしており、かつ、証券保管振替機構(以下、通称である「ほふり」と称します)の預託に同意している場合
⇒証券会社の口座でそのまま管理
●それ以外の場合
(例)株主自ら株券を保管している場合
●株主が株券を証券会社に保護預りしているが、ほふりの預託に同意していなかった場合
⇒株式の発行会社における株主名簿管理人(主に信託銀行がなる)の特別口座で管理
上記に加え、証券会社と信託銀行とで発行する書面の種類も異なります(こちらは後述します)。
そのため、株主に対して株式に関する書面が発行される場合、一般的には証券会社が作成する書面と、信託銀行が作成する書面が混在することになります。
これが相続人の方々が困惑してしまう理由のひとつになってしまうのです。
さて、株式の相続手続きを行うためには、まず、故人が保有されていた株式の詳細を把握する必要があります。
故人がどの銘柄の株式を保有していたのかは、主に以下の書面で調べます。
●株主名簿管理人である信託銀行から送付される配当金通知書や株主総会招集通知
しかし、お手元にこうした書面が残されていない場合は、ほふりに対して情報開示請求を行うことになります。
これを行うと、どの金融機関が故人の保有株式を管理しているか知ることができ、保有株式のチェック漏れを防ぐことができます。
※ただし、開示請求では保有銘柄の詳細までは分からないため、別途金融機関に対して保有銘柄の一覧を請求する必要があります。
株式を管理している金融機関と、保有銘柄の内訳が分かりましたら、いよいよ株式の相続手続きです。
まず、株式を管理している金融機関に応じて、以下の部署に連絡し、相続手続きの申請書類を郵送で取り寄せます。
◆証券会社:故人が口座を持っていた支店
◆信託銀行:証券証券代行部
証券会社の場合にご注意いただきたいのは、必ず「故人が口座を持っていた支店」にご連絡いただくという点です。
証券口座で管理されている場合、口座のある支店でなければ取引状況の確認が行えません。
証券会社における取引情報の確認は、実際に口座を開設している支店でしかすることができないためです。
(銀行預金の口座確認は、一般的にどの支店の窓口でも手続きが可能です。)
連絡をすると1~2週間程度で会社所定の必要書類がお手元に届きます。
株式の移管にあたっては、上記の申請書類のほかに以下の書類も準備しなれけばなりません。
●相続人全員の現在戸籍
●遺産分割協議書(相続人全員の署名とご実印の押印が必要)
●相続人全員の印鑑証明書(有効期限あり)
特に戸籍の収集に関しては、多くの場合、複数の役所に発行請求をかけることになります。
この作業に最短でも1ヶ月はかかりますので、早めのご対応が必要です。
証券会社や信託銀行の窓口で手続きを行い、相続人名義の証券口座に株式を移管いたします。
窓口での手続きに1時間ほどかかり、その後、移管の完了までに1ヶ月程度を要します。
なお、移管手続きは支店窓口で行うことをお勧めします。
郵送で行うことも出来ますが、この場合、戸籍謄本や遺産分割協議書、相続人全員分の印鑑証明書の原本を提出する必要があります。
特に複数の証券会社や信託銀行が手続きの対象となる場合、これらの返送があるまで、他の金融機関への手続きは行えないことになりますのでご注意ください。
営業時間については、信託銀行の場合は平日9時~15時、証券会社の場合は平日9時~遅くとも17時くらいまでが一般的です。
また、以下の点について、預金の相続手続きよりも手間がかかることも念頭におく必要があります。
①株式移管手続きの詳細が金融機関ごとに異なる
預金の相続と比較すると、金融機関ごとの特徴が移管手続き等に反映されやすいため、それぞれの金融機関にあわせて対応を変えていかなければなりません。
②証券会社で管理されている場合、かつ、故人の株式を管理する証券会社に、相続人が証券口座を持っていない場合は、別途口座開設が必要
預金の相続の場合、振込手数料を負担すれば他の金融機関への振込も可能です。
【例】故人の株式を管理する証券会社=A証券会社だが、相続人が口座をお持ちの証券会社=B証券会社
⇒B証券会社の口座へは移管できません。この場合、A証券会社に口座を開設する必要があります。
③信託銀行の特別口座で管理されている場合は、任意の証券会社の口座へ移管
相続人が証券口座を一切持っていない場合、別途口座開設が必要です。
なお、信託銀行内に別の特別口座を作ってそちらに移管することは出来ません。
いががでしたでしょうか。
預金の相続の場合とは異なり、株式の相続では証券会社・信託銀行・ほふりのそれぞれに対して所定の手続きが必要となります。
また、株式には配当金が発生するものがありますが、こちらの手続については、【相続手続きと株式実務②】にてご紹介しておりますので併せてご覧ください。。
株式移管については通常の預貯金解約と異なり相続人様への負担も大きくなります。
まずはお早めに、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティのの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまでご相談下さい。
手続きの進行見込み等、経験則を活かしてご提案させて頂きます。