金融機関での相続手続きに必要な書類 (2020.10.01)
預貯金をしていた人が亡くなったことを金融機関が知ると、その方の口座は凍結され、以後は入出金ができなくなります。
口座に残された財産を相続するためには、金融機関での相続手続きが必要になってきます。今回は金融機関での相続手続きの必要書類についてまとめていきます。
金融機関での相続手続きでは、金融機関ごとに必要書類が若干異なってきますが、基本的に必要になってくる書類について解説していきます。
亡くなった方の相続人を特定する必要があるため、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍が必要になります。
また相続人が生存していることを証明するために、相続人の現在戸籍も必要になります。
この戸籍・除籍謄本は法定相続情報で代用することも可能です。
金融機関の相続手続きでは、相続人の実印での捺印を求められる書類があります。
また、それが相続人の実印であることを証明するために、印鑑証明書の提出も求められます。
印鑑証明書の使用期限は、多くの金融機関では取得日より6カ月以内とされていますが、3カ月以内の印鑑証明書を求めてくる金融機関もあります。
金融機関の数が多かったり手続きに時間がかかったりすると、印鑑証明書をもう一度取得しなければならない、なんてこともあります。
金融機関での相続手続きでは原本をその場で提示し、金融機関がそのコピーをとり、原本を返してもらうという形で手続きをしていきますが、まれに印鑑証明書だけは原本の提出を求められることがあります。
その場合にも再度、印鑑証明書の取得が必要になります。
金融機関の相続手続で記入をしなければならない書類は、一律に決まった形のものがあるわけではなく、金融機関ごとに形式が異なります。
亡くなった方が複数の金融機関に口座などをお持ちであった場合には、金融機関ごとに記入の仕方を確認しながら書類を記入しなければなりません。
●営業時間は15時まで
●窓口に行っても待ち時間が長い
などの理由からこの作業が意外と面倒な作業となってきます。
法定相続分とは異なる割合で相続する場合とは、例えば、
●遺産分割協議によって法定相続分とは異なる割合で財産を相続すると話合いがまとまった場合
●亡くなられた方が遺言書を残していた場合
などがあり、その場合には、そのことを書面で証明しなければなりません。
上記例では、遺産分割協議書、遺言書などがそれにあたります。
相続人がご自身で作成した遺産分割協議書、または、亡くなった方が残された自筆証書遺言を使い金融機関で相続手続きをしようとすると、財産の記載に漏れがあった又は誤りがあったなどの理由で、金融機関が手続きに応じてくれないこともしばしばあります。
【遺言が無効となったケース~自筆証書遺言編~】
これら基本的な書類以外にも、金融機関によって必要となる書類が若干異なる場合があります。
役所での手続きとは違い、手続き方法が統一されていないことが金融機関での相続手続の煩わしい部分です。
何度も電話でやり取りするのが面倒、または忙しくて金融機関に行く時間がない、といった場合には、専門家に依頼するのも一つの手ではないでしょうか。
当法人では経験豊富な相続専門の司法書士が、金融機関と交渉をしながら手続きをしてまいります。
是非一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまでお気軽にご相談ください。
成年後見の申立て手続き (2020.09.29)
親が認知症になってしまい、お金の管理が出来なくなってしまった。あるいは精神的な病気にかかってしまい、持っている投資用マンションの管理が出来なくなってしまった。
その様な場合、以後はご自身で管理をすることができないため、その方の財産管理や身上監護を代理で行う、成年後見人を立てる必要があります。
申立ては家庭裁判所に行っていくのですが、成年後見人就任に至るまでどのような流れになるのかを、今回はご説明したいと思います。
申立てに必要な提出書類は家庭裁判所のホームページからダウンロードする事も出来ますし、家庭裁判所に申し立て書類を取りに行くこともできます。
なお、ご本人の居所・財産状況に応じて、成年後見人が途中で交代する事はありますが、成年後見は一度申立てを行うと、ご本人の管理能力が回復するか、お亡くなりになるまで継続されます。
したがって、特に申立てを行うご親族の方には、後見制度をよく理解して頂く必要があります。
(詳細は、【成年後見制度のメリット・デメリット】 の記事をご参照ください。)
裁判所に書類を取りに行くと、裁判所の職員の方から上記のような説明がされ、申立ての手引き等の説明書もここで渡されることになります。
各書類の細かい説明は別のトピックスでご紹介しますが、成年後見の申立てには様々な書類を提出する必要があります。
・申立事情説明書
・本人事情説明書
・後見人候補者事情説明書
・親族関係図
・親族の意見書(同意書)
・医師の診断書及び診断書付票
・本人確認情報シート
・財産目録
・収支予定表
・相続財産目録
※以上は裁判所にて書式を入手できるものです。
・本人の戸籍謄本
・後見人候補者の戸籍謄本
・本人の住民票(又は戸籍の付票)
・後見人候補者の住民票(戸籍の付票)
・登記されていないことの証明書
・(お持ちの方のみ)療育手帳のコピー
・本人の財産に関する資料
細かい点や、提出書類の書式は各家庭裁判所により異なる場合がありますので、確認が必要になります。
( 裁判所ホームページ『各地の裁判所』 )
書類をそろえたら、申立てを行なうご親族と家庭裁判所の調査官との面談がありますので、家庭裁判所に面談の空き状況照会をし、予約をします。
面談の数日前までに書類の提出を求められることが多いので、その期日までに書類を提出します。手続き上は、この時点で「申立てをした」という扱いになります。
事前に予約した期日に家庭裁判所に出向き、調査官との面談が行われます。
事前に書類を提出しているので、面談を行う調査官は一通り資料に目を通したうえで、面談に臨んでいます。
調査官から、申立を行なった動機や、ご本人の様子、判断能力の状態、他の親族の同意の有無、現在の財産の管理状況等を聴取されます。
面談の結果は、裁判官へと伝えられます。
家庭裁判所が必要と判断した場合、ご本人が後見相当なのかを調査するため、医師による精神鑑定が行われます。
(明らかに後見相当に該当すると判断され、精神鑑定が必要でないと判断された場合には省略されます。)
基本的には診断書を作成した医師により行われますが、当該医師が鑑定を拒否した場合等、家庭裁判所が指定した医師による鑑定が行われることもあります。
その場合、申し立てにかかる期間が1、2か月延びてしまう事もあります。
以上の手続きにて得られた情報を裁判官が総合考慮し、後見開始をするのか、後見人として誰を選任するのかを判断していきます。
裁判官の判断の結果、後見相当とされた場合、誰を後見人に選任するかも含め後見開始の審判が下り、審判書が申立人の親族に送られます。
場合によっては、家庭裁判所の判断により、申し立て時に候補者として書いた親族ではなく、家庭裁判所が適切と判断した専門職(弁護士や司法書士)の者が選任されるケースもあります。
また、ご本人の財産が多い等の理由により、親族を後見人とし、別途専門職の者が後見監督人として選任される場合もあります
審判書を受領し、2週間は異議申し立て(候補者が選任されなかった点等についての異議申し立ては不可)が可能です。
したがって、受領してから2週間を経過すると、後見審判が確定します。
以上が後見申立の一般的な流れになります。事情により変動がありますが、申し立て書類を提出してから2、3か月で、審判まで終わることが多いかと思います。
成年後見の申し立ては、収集する書類が多く、一般的になじみの薄い手続きですので、ご自身で行うのは時間と労力がかなりかかってくると思います。
当法人では、制度について何もご存知なくても、一から丁寧にご説明させて頂きまして、書類の収集代理・提出書類の記入代理、さらに家庭裁判所との連絡も当法人にて致します。
成年後見の申し立て手続きをお考えの方は、司法書士法人鴨宮パートナーズにお気軽にご相談下さい。
相続預金を使ったファイナンシャルプランニング (2020.08.27)
以前のトピックスで、相続と生命保険・遺留分と生命保険を取り上げました。
今回のトピックスでは、相続財産である預貯金原資を使ったファイナンシャルプランニングをテーマに取り上げてみたいと思います。
相続で預貯金を取得する際、その額が数千万円、時には1憶円を超える場合もあります。
相続する預貯金が数千万円ある場合、そのお金の使い道が分からないと言ったご相談を受けることが良くあります。
実際に、当法人のファイナンシャルプランナーの資格を有する司法書士が提案した事例を基に、そのスキームの一例をご紹介致します。
下記の相続関係をご覧ください。
相続関係と遺産を基本情報として、相談が開始し、当初は亡くなった母の生前の意思を組んで、長男・二男で遺産を2分の1ずつ取得する方向で話が進んでいきました。
ところが、電話や面談を重ねる内に、このご家庭に長年潜んでいたある悩みが、当法人の司法書士に、二男様から打ち明けられます。
『先生、先生に紹介して頂いた税理士の先生から、自宅は兄が取得することで小規模宅地の特例を使い、評価額を8割圧縮し、残った預金を私が少し多めに取得することで兄と結果的に2分の1ずつ遺産分割をすることは理解できました。
しかし、兄は定職についておらず、金銭面で不安がある為、将来4~5年後には相続した自宅を売却しかねません。
また、兄は浪費癖が酷く、週末になると朝まで飲み歩き、高級クラブから毎月数十万円の請求が来ると言った始末で、生前はそれを母が払っていたんです。
見かねた母は私に相談し、自分が死んで相続が発生したら、遺産は折半してもらいたいが、兄の財産の管理は私にするようにときつく言われております。
また、自宅は売却等はせずに守ってほしいとの意向も聞いています。
兄は結婚しておりませんが、もしかしたら単純な兄のことなので、お金を持つとクラブ等で悪い相手に騙される恐れも危惧しております。
どのように進めるのが一番良いでしょうか?』
この事案において、二男様には、相続税を節税することよりも、兄の財産管理と兄が取得した遺産を散財させたくないと言った意図があり、遺産分割に、兄の相続後のファイナンシャルプランニングと財産管理を含めて提案しなければなりません。
通常の司法書士業務の範囲でもないので、周辺知識の浅い司法書士ならお手上げ、といったようなご相談です。
なお、長男様には、遺産分割のことは全て弟に任せるが、キャッシュで3000万円程は受け取りたい。
自宅には拘りが無いので、近いうちに引っ越しをする予定との意図がありました。
そこで、当法人の司法書士が、遺産分割及び長男様のファイナンシャルプラン、財産管理を念頭に下記のスキームを提案しました。
(ご意向を優先し相続税のことは度外視し、当事者と被相続人の意図を最大限組んだスキームとなっております)
(念のため、長男が引っ越しをするまでは、自宅の使用収益を認める旨の使用貸借契約書を締結しておく)
65歳から月々数十万円の定額給付が終身ででるようにしておきます。
また、保険契約者を長男にしてしまうと、いつでも解約することが出来るため、
保険契約者=二男、被保険者=長男、受取人=長男、保険料負担者=長男との契約形態を提案いたしました。
最後に②の内の3000万円は、委託者=長男、受託者=二男、受益者=長男、残余財産の帰属権利者を二男とする民事信託契約(通称で家族信託と言われているものです。)を提案いたしました。
詳細としては、信託契約後、初年度及び二年目までは受託者から受益者に1000万円を限度に、受益者が求める金銭を受託者が月々又は一括にて給付し、3年目以後は月30万円を限度に定額給付する旨の契約内容です。
③及び④について、全てを民事信託契約で二男様が長男様の財産管理をすることも検討しましたが、額が額だけに、長男様から異論を唱えられる可能性があります。
委託者と受託者の年齢が近い為先に受託者が死亡してしまうことも懸念し、死亡のリスクのない保険会社に大部分の金銭を預けることを提案しました。
また、金銭で管理しておくよりも、終身年金保険に組み替えておいた方が、将来受け取れる額が大幅に増えるメリットを考え、上記の提案に結びつきました。
相続手続きを終え、上記の財産管理及びファイナンシャルプランニングを提案通り実行し、
長男様は『一気に浪費してしまうリスクが回避できた。』
二男様は『兄の浪費をこのスキームで回避が出来、兄の老後の資金計画もでき、将来の兄の生活に支障が出ないことに安心した。また、なにより、母が生前考えていた意志を実現出来た。』
と大変ご満足いただけました。
この案件では、提携している保険会社の助言等も多く頂きましたが、かなり難易度の高い提案をすることにより、結果的に満足していただける結果となった事案で、思い出深い事案です。
いかがでしたでしょうか。
当法人では、相続手続きを受ける際、相続専門の司法書士が専任担当致します。
相続手続きは、各ご家庭が抱える悩みが全然違っており、税務の知識や財産管理、時には今回のようなファイナンシャルプランニングも必要なケースも出てきます。
ただ単純に自宅の名義を変えるだけ・預金の解約をするだけの業務ではなく、付加価値を付けてサービス提供していきます。
お悩みの方は、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、是非お気軽にご相談下さい。
遺留分の放棄② (2020.08.06)
前回のトピックスで、相続発生後の遺留分の放棄について取り上げました。
今回のトピックスでは、相続開始前の遺留分の放棄をテーマにお話をさせて頂きます。
被相続人が亡くなる前の遺留分の放棄は家庭裁判所の許可が必要となり、遺留分を放棄する方が家庭裁判所に申立をして手続きをする必要があります。
被相続人が亡くなった後の遺留分の放棄と比べて、手続きのレベルは格段に上がり、思うような結果が得られないことも少なくありません。
この、被相続人が健在中の遺留分の放棄は、限定承認の手続きと並び、相続手続きの中で極めて難易度が高い手続きと言っても過言ではないでしょう。
それでは、当法人の相続チームの司法書士が、実際に手続きをした事例を基に手続きの概要を見ていきましょう。
下記の相続関係を参照してください。
上記の相続関係において、遺言者A様は、『生前にX土地を長女C様に生前贈与をし、自分の亡き後は自宅を長男B様に相続をさせたい。』と考え、
●自宅を長男Bに相続させる旨の遺言を書きたい
●長女Cには今すぐ贈与登記を実行したい
と、当法人の司法書士に相談を持ち掛けました。
この相談を受け、当法人の司法書士は、
●生前にX土地を長女Cに贈与すると、多額の贈与税及び登記費用、不動産取得税がかかる
●相続開始時において、長女Cから長男Bに対して遺留分侵害額請求権の行使をされる恐れがある
※長女Cが生前贈与を受けていれば、特別受益を主張して遺留分請求に対抗できる余地はある
上記を懸念して、遺言内容を『自宅は長男B、X土地は長女C』との、遺留分を確保した遺言作成を提案しました。
しかし、遺言者A様は自己の相続開始後、遺言内容が実現出来るとも限らず、将来長男長女の関係がどうなるかも分からないことから、
『生前に長女Cに遺留分相当額を確保した贈与をする代わりに、自分の死後に長男Bが自宅相続する事について、一切異論を唱えてほしくない。』
という強い願望があり、どうしても上記のスキームで手続きをしてほしいととの事でした。
そこで改めて、当法人の司法書士は下記の内容を提案しました。
①長男Bに自宅を相続させる旨の遺言を書く
②長女Cに生前贈与としてX土地を贈与する
(但し、贈与税率に比べ相続税率が安くなることから、相続時精算課税制度の選択→2500万円までは贈与税が非課税になる)
③遺言者Aが生前中に、長女Cに遺留分放棄の許可審判を家庭裁判所に申立てもらう
上記の内、③が今回のテーマであり、手続きに非常に苦慮しました。
なぜなら、遺言者生前の遺留分放棄は、前述のとおり家庭裁判所の許可が必要であり、この許可は各家庭裁判所の裁判官の裁量が大きく影響し、一定の基準はありますが、画一的な許可基準がないからです。
一定の基準としては、下記の基準があります。
②遺留分放棄に合理性・必要性があること
③生前贈与等の代償性があること
上記の許可基準で、最も重要視されるのは①の自由意思に基づく申立です。
なぜなら、本来遺留分とは、遺言によっても侵害出来ない、法律で認められた最低限の相続分であり、遺言者の圧力でその遺留分を失ってしまうという、不合理な結果を避けるためだからです。
幸い、今回のケースでは、遺留分4分の1相当のX土地の生前贈与があり、贈与税の申告書を申立に添付した上、長女C様も遺留分請求に関しては全くといっていいほど興味を示していなかった為、申立書に自由意思であることを存分にアピールしていく事が出来ました。
自由意思による申立であることの間接証拠として、見返りとして既に生前贈与を受けている等の事情を細かく審理され、実際の許可審判がなされます。
したがって、単に遺留分を事前に放棄しておきたいからとか、結婚の許可を親からもらう為に遺留分を放棄するとか言った事情で、遺留分の放棄が認められることはまずない、と言って過言ではありません。
いかがでしたでしょうか。
遺言者の生前中に遺留分の放棄の許可審判の申立などは、相続専門の司法書士又は相続専門の弁護士に相談をされることをお薦め致します。
当法人では、1000件近くの相続手続きを手掛けてきた相続専門の司法書士が在籍する相続専門チームがあり、このような特殊な事例にも対応することが可能です。
お悩みの方は、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、是非一度お気軽にご相談下さい。
遺留分の放棄① (2020.08.04)
以前のトピックスで、遺言と遺留分に関するトピックスをいくつか上げさせて頂きました。
今回は、実際に当法人の司法書士が相談を受け、扱った特殊な事例として、遺留分の放棄をテーマにお話をさせて頂きたいと思います。
まず遺留分とは、法定相続分とは別個の権利で、一部の相続人(相続人が兄弟姉妹・甥姪には遺留分は認められない)にのみ認められた、最低限保障されるべき相続分のことをいいます。
従って、被相続人が遺言や家族信託を組成する中で、特定の相続人のみに遺産を承継させたりする場合(他の相続人の取り分が一切ない場合)に問題になります。
通常、遺留分は相続人が直系卑属(子・孫)であれば法定相続分の2分の1は保障されます。
また、相続人が直系尊属(親・祖父母)のみである場合は3分の1が保障されます。
遺留分放棄のやり方には、被相続人の生前中にするものと、被相続人の死後にするものに分けられますが、今回は、被相続人死亡後の遺留分放棄についてご説明します。
下記の相続関係において、被相続人A様が遺産の全てを長男B様に相続させると遺言を残して死亡しました。
長男B様は、被相続人A様が書いた自筆証書遺言を片手に当法人の司法書士に相続手続きを依頼。
長男B様は、長女C様に4分の1(法定相続分2分の1の2分の1)の遺留分が発生することを知っており、どうすれば一番良いだろうか、と相談をされました。
被相続人の死亡後の遺留分の放棄の手続きには、法律上特に決まった要式行為(公正証書や裁判所への申立でするなど)を求められておらず、受遺者等への意思表示のみで足りるとされています。
この意思表示は口頭でも足りますが、実務上は、後日言った言わないのトラブルになったり、気が変わったりした時など、遺留分請求された場合に対抗する措置として、きっちりと書面に残して証拠保全をしておいた方が良いでしょう。
上記の事実関係及び法律効果を熟考した末、長男B様に下記の方法をご提案しました。
②長女C様に相続放棄手続きをしてもらうこと
但し、②の相続放棄手続きは、ある程度長女C様側で裁判所に申し立てをしてもらい、一定のやりとりを裁判所としなければならない点や、相続放棄の審査が終了するまでの間(通常1か月)は申立を取り下げることができる点(手続き終了後は撤回は出来ません…民法919条1項)等のデメリットを説明しました。
相続放棄申立中に、万が一、長女C様の気が変わり申立を取り下げられると、話の流れは大きく変わります。
最終的に長男B様は、上記提案のうち、①の「遺留分放棄の意思表示を長女C様にしてもらうこと」を決定されたので、後日、当法人の司法書士が長女C様に、相続についての意向確認の手紙を送り、コンタクトを取りました。
結果、長男B様と長女C様の話し合いの末、長女C様は被相続人との関係性が疎遠であったこと、及び長男B様が献身的に被相続人の介護をしていた事実を受け、遺言の内容及び遺留分の一切を放棄するとの意思表示を確認出来たため、話し合いの当日、当法人で作成した遺留分放棄証書に実印を頂戴し、証拠保全を完了しました。
最終的には、遺言の検認手続き及び遺言通りの相続手続きを完了し、加えて遺留分権利者からの遺留分請求への対抗措置を準備することができ、長男B様は安堵の表情を浮かべておりました。
いかがでしたでしょうか。
実は相続発生前でも遺留分の放棄をすることができますが、それについては【遺留分の放棄②】にて取り上げておりますので、こちらも併せてご覧ください。
相続手続きには、それぞれのご家庭に違った悩みがあり、一件一件問題解決の方法が違います。
当法人には、様々な問題解決をしてきた相続専門の司法書士が在籍しております。
今回取り上げたような、遺留分放棄等滅多に関わらない案件にも積極的にトライして解決に導いていきます。
是非一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、お気軽にご相談下さい。
自筆証書遺言と物件の同一性 (2020.07.31)
以前のトピックスで、自筆証書遺言について取り上げました。
公正証書遺言と法務局で保管された自筆証書遺言(令和2年7月10日より保管制度開始)以外の遺言書は、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。
遺言書の検認を受けていなければ、不動産の名義変更登記の申請、預貯金解約等の相続手続きをすることができないからです。
しかし実のところ、検認を受けたからといって、その遺言書を使って不動産の名義変更等を行えるとは限りません。
遺言書の記載内容が明確でないために、遺言書だけではその内容を実現できないケースがしばしば見受けられるのです。
≪事例≫
相続人からの遺言書に関するご相談で、お亡くなりになった方は生前に自筆証書遺言を作成していました。
遺言書はすでに検認手続き済みとのことです。
遺言には「自宅はAに相続させる」「別宅はBに相続させる」と記載されていました。
住所などの記載はないものの、以前よりお亡くなりになった方から遺言内容を聞いていたため、相続人の間では対象物件がどれになるのか合意済みで、特に争いはありません。
しかしこの事例、遺言書に基づく不動産の名義変更について、事前に登記所に照会をかけたところ、受理できないとの回答を受けました。
不動産の名義変更を登記所に申請する場合、対象となる物件を正確に特定しなければなりません。
今回のケースであれば、登記簿謄本の記載に従って、少なくとも
●建物なら所在、家屋番号
を遺言書に記載する必要があります。
これらの情報を知るには、不動産ごとの登記簿謄本の確認が必要です。
上記で挙げた情報がないと、遺言書で書かれている不動産と、名義変更の対象となる不動産が同じ物件なのか登記官が判断できず、遺言書を使って不動産の名義変更することができないといった不具合が生じます。
しかし、ご自身で作成する自筆証書遺言の場合、こういった形式的な事情を知らずに住居表示(=住所)で記載されることが多く、この住居表示と対象物件の所在・地番等が同一の物件であることを申請者側で示さなければなりません。
今回の遺言書では「自宅」「別宅」としか記載されていないため、まずはその所在等を明らかにします。
また、ここでいう自宅・別宅とは建物だけなのか、それとも敷地である土地も含むのかも併せて検討が必要となります。
遺言書の内容が不明確な場合、特定の条項の解釈をどのように行うべきか、下記の最高裁判例があります。
≪最高裁判決 昭和58年3月18日≫
遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し、当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。( 一部抜粋 )
なんだか難しい表現ばかりで解りづらいですよね。
要約すると、『遺言書の特定の部分が不明確であった場合、杓子定規に文言の字面だけで判断するのではなく、遺言書の全体との関連性や諸事情を考慮することも認めていますよ。』という事なのです。
よって、内容が不明確な遺言がある場合には、この判例を前提として検討する必要があります。
遺言書・対象不動産の登記簿謄本・お亡くなりになった方の戸籍附票謄本などを集め、各不動産の所在地を管轄する登記所に事前相談を行います。
この際、遺言の対象となる不動産と、名義変更の対象として提示した不動産が同じものかどうかの判断は、登記官に委ねられます。
よって、案件によって、相続人全員の署名・実印済み上申書(印鑑証明書付き)の追加提供を求められたり、遺言書による名義変更を受け付けてもらえないといったことが起こるのです。
自筆証書遺言はご自身だけで気軽に書けるメリットがあります。
しかし、作成時に適切なサポートがないと、ご自身の想いを望んだ形で遺せないという大きなデメリットも存在する、といった事例でした。
いかがでしたでしょうか。
上記のような事例はほんの一例であり、実際には検認手続きをするまでもなく無効と判断されてしまった件や、登記には問題なく受理されたが、金融機関の解約手続きでかなり危うい状況に陥りそうになった件(最終的には何とか受理されましたが、個人でお手続きされていたらまず突っぱねられていたでしょう。)なども、実は多く見受けられます。
大切なご遺産を確実な形で遺したいとお考えの方は、まずは専門家へご相談する事をお奨めいたします。
遺言をお考えの方は是非一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまでお気軽にご相談ください。
遺言書の検認 (2020.07.22)
以前のトピックスで、公正証書遺言と自筆証書遺言について取り上げました。
⇒【遺言の種類と書き方~公正証書編~】
⇒【遺言の種類と書き方~自筆証書編~】
⇒【遺言が無効となったケース~公正証書遺言編~】
⇒【遺言が無効となったケース~自筆証書遺言編~】
⇒【自筆証書遺言書保管制度について】
公正証書遺言と法務局で保管された自筆証書遺言(令和2年7月10日より法務局での保管制度開始)以外の遺言書は、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。
遺言書の検認を受けていなければ、不動産の名義変更登記の申請、預貯金解約等の相続手続きをすることができないのが通常です。
今回のトピックスで改めてこの『検認』について触れていきましょう。
自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見した人が、自分の都合のいいように遺言書の内容を変更したり、遺言書を破棄したりすることを防止するために遺言書の検認が行われます。
検認手続きでは、相続人が集まって遺言に書かれている内容を確認し、遺言書をその時の状態で保存します。
検認手続きを終えると、検認済証明書を発行してもらえるので、裁判所で検認を受けた遺言であることを証明できます。
・遺言書を発見した相続人
相続開始を知った後、遅滞なく、遺言書を家庭裁判所に提出して検認を請求なければなりません。
遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に申立てを行います。
・遺言書1通につき、収入印紙800円
・連絡用の郵便切手(各家庭裁判所によって異なります)
・遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本
・相続人全員の(現在)戸籍謄本
・相続関係が確認できる戸籍謄本
・受遺者がいる場合には受遺者の戸籍謄本
戸籍謄本は、法定相続情報一覧図の写しを提出すれば、基本的には提出する必要はありません。
但し、ケースによっては一部の戸籍謄本等の提出を求められることがあります。詳細は管轄の裁判所の指示に従ってください。
検認手続きをしていなかった場合、最終的に名義変更等の遺言執行をすることが出来ません。
なぜなら、自筆証書遺言はそのままでは被相続人本人の自署による遺言書かどうかの判断出来ない為、登記や預貯金解約等のほとんどの名義変更手続きにおいて、遺言書の検認後に裁判所から発行される遺言書検認済証明書や遺言書検認調書謄本の提出を求められるからです。
検認をせずに遺言執行手続を行った場合、5万円以下の過料(行政罰)が科される可能性があります。
また、封印のある遺言書は、検認時に家庭裁判所で相続人の立会いの上で開封する必要があり、こちらも勝手に開封してしまった場合、5万円以下の過料が課される可能性があります。
↓
②相続人・受遺者への検認期日通知
↓
③遺言書の検認
↓
④検認調書作成
↓
⑤検認済証明書の交付請求
自筆証書遺言を発見したら、まずは相続人や受遺者から家庭裁判所に検認申立てをする必要があります。
申立てから検認期日(検認を行う日)が開かれるまでに約1ヶ月程度かかります。
相続人・受遺者には、申立後に裁判所から検認期日が通知されます。
申立人以外の相続人が検認期日に欠席した場合にも、検認手続きは行われます。
期日では申立人から遺言書が提出され、出席した相続人の立会いのもと封筒を開封し、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名などの検認期日現在における遺言書の内容を確認します。
このとき相続人に対し、遺言が自筆であるか、押印が遺言者のものであるかどうかを確認されます。
検認手続き後、検認年月日・立会人の氏名・住所・立会人の陳述の要旨等が記載された検認調書が作成されます。
遺言執行後に登記や預貯金解約等の名義変更をする上で、遺言書に検認済証明書がついていることが必要となるケースが大半ですので、検認済証明書の交付を請求します。
検認済証明書の交付は、検認期日が行われた日のうちに請求することができます。
家裁での遺言検認手続きが無事終わり、ようやく様々な手続きを進めていこうとした時、大きな落し穴が潜んでいる点に注意する必要があります。
遺言書の検認申立をするには戸籍謄本等の必要書類を収集しなければなりません。
相続人が多数いたり、被相続人が何度も転籍していたりすると、戸籍の収集だけでも1ヶ月以上かかることもあります。
ようやく必要書類がすべて集まり、いざ検認申立てをしても、検認期日を迎えるまでに約1ヶ月の期間がかかります。
その間、相続に関する手続きが止まってしまいます。
ここで注意しなければいけないのが、検認に時間がかかってしまったからといって、相続放棄の申述期限(相続発生後3ヶ月)や相続税の申告期限(相続発生後10ヶ月)などは延長されない、という点です。
その後の相続手続きの中で思わぬ債務が発覚したが相続放棄の申述期限を過ぎてしまった、などといった事態に陥っては洒落になりません。
また、預貯金などの口座は被相続人の死亡が判明すると凍結されます。
被相続人の口座が凍結されてしまうと、当然その口座での引き落としや引き出しは一切できなくなります。
検認手続きが終わるまで相続手続きが滞ってしまうと、残された相続人の生活に支障が出てしまう可能性もあります。
※民法改正により、法定相続人であれば一定の要件を満たせば「預貯金の仮払い請求」が可能になりました。(令和元年7月1日施行)
多くの人が考え違いをしてしまうのですが、検認を受けたからと言って、その自筆証書遺言が有効であると確定するわけではありません。
検認の目的はあくまで証拠保全です。
要するに、「この遺言書は、裁判所でこの期日に検認しましたよ。」という事実を証明できるだけであり、その後の相続手続きでその遺言書の内容通りに手続きを進める事を保証しているわけではないのです。
せっかく時間をかけて検認申立を終えても、遺言書としての効力が無ければ元も子もありません。
遺言書の検認申立てをする際、多くの必要書類の収集や申立手続の書面を用意する必要があります。
申立人の事情により本人が手続きを進められない場合、司法書士等の代理人に依頼する必要があれば、その依頼費用がかかってきます。
いかがでしたでしょうか。
自筆証書遺言は公正証書遺言と比較して気軽に書けるメリットがある反面、その後の相続人や受遺者の手続が煩雑になる事や、何よりご自身の想いを望んだ形で遺せないという大きなリスクがあります。
当法人では、遺言を検討されている方にはやはり、公正証書遺言をお勧めしています。
多少のお費用はかかってしまいますが、相続に関して豊富な知識を持つ専門チームが、ご依頼者様の意思を的確に反映し、煩雑なお手続きをしっかりとサポートさせて頂きます。
また、どうしても自筆証書遺言を遺したいという場合でも、遺言内容へのコンサルタントという形でサポートさせて頂きます。
遺言をお考えの方は是非一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、お気軽にご相談ください。
特別寄与料について (2020.07.07)
寄与分とは、『亡くなった方の財産の維持または増加について特別に貢献した相続人は、その分法律に定められた相続分(法定相続分)より多くの財産を取得することができる』という制度です。
この制度は、相続人が複数いる場合の、相続人間の不平等を是正するために設けられました。
例えば親の家業に従事して親の財産を増やした人や、病気の親を介護して財産の減少防止に貢献した人がいる場合に、法定相続分より多くの財産を取得できるという制度です。
但し、これまで、寄与分を受けられるのは相続人に限られまていました。
つまり、例えば亡くなった方の息子の嫁が生前に看護していたとしても、寄与分を主張することはできなかったのです。
これでは相続人以外が特別の寄与をしても報われないことになってしまいます。
そこで相続法が改正され、2019年7月1日以降に開始した相続については、相続人以外でも特別寄与料を請求することができるように条件が緩和されました。
特別寄与料を請求できるのは、
①亡くなった方に対して無償で療養看護その他の労務の提供したことにより、
②亡くなった方の財産の維持または増加について特別の寄与をした、
③亡くなった方の親族
が対象となります。
先に例で挙げた、亡くなった方の息子の嫁が無償で介護してきた場合などが該当します。但し、介護の際に対価として金銭などを受け取っている場合には、特別寄与料を受け取ることはできません。
例えば亡くなった方の療養看護することによって訪問看護等のサービスを利用せずに済めば、その分財産の減少を防止したといえるでしょう。
親族とは、6親等内の血族、3親等内の姻族、配偶者の範囲に属するものをいいます。
特別寄与料は亡くなった方の相続人に対して請求することができます。
相続人が複数いる場合には、その相続人の相続分に応じて請求をすることができます。
特別寄与料が100万円あり、各相続人の相続分がAさんは2分の1、Bさんは4分の1、Cさんは4分の1であるとします。
この場合、Aに対しては100万円の2分の1である50万円を、BとCに対しては100万円の4分の1である25万円をそれぞれ請求することができます。
特別寄与料は特別寄与者と相続人との協議によって決まります。
協議によって決まらない場合は、家庭裁判所に協議に変わる審判を請求することができます。
その場合、家庭裁判所は、寄与の時期、方法、程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して特別寄与料を定めることができる、とされています。
特別寄与料を認めてもらうには、介護をした証拠を残しておくことも重要です。
「◯月▲日、8時から17時まで~のようなお世話をした。」
といった詳細な介護日誌を付けておくと認められやすくなります。
個人的な生活の記録を記した手帳や日記でも、介護の様子をメモしておくことで証拠に成り得ます。
前述の特別寄与料を請求する場合には、
・特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六ヶ月を経過したとき
又は
・相続開始の時から一年を経過したとき
までとなっています。
これは、特別寄与請求権者は療養看護等していることから、比較的容易に被相続人の死亡を知ることが出来る場合が多いと考えられ、また、金銭の支払請求を受ける可能性がある相続人の立場を考慮すれば、できるだけ早期に法律関係を確定させる必要があるとの考えから上記の期間制限が設けられました。
相続が発生してから六ヶ月、一年という期間は、思いの外あっという間に過ぎてしまいます。
直接的な相続人ではないが療養看護等を通して被相続人の財産の維持増加に寄与した、と考える親族の方は、出来るだけ早めに各相続人に対して、特別寄与料を請求又はお早めに協議をすることをお勧めします。
遺留分制度の見直し (2020.06.23)
以前のトピックスで、遺留分について取り上げ、遺言書を書く場合に注意する点や、生命保険を使った相続対策をご説明させて頂きました。
今回は、2019年7月施行の法改正により遺留分制度の見直しがされたことについて、改正のポイントについて見ていきましょう。
今回の遺留分制度の改正の中で最も重要なポイントが、「遺留分の権利が金銭債権化」されたというところです。
「遺留分の権利が金銭債権化」されたとはどういうことでしょう。
簡単に言うと、遺留分として請求できる権利(=対象)がお金に限定されたということです。
それによりどう変わるのか下記事例で見てみましょう。
父が「長男に全ての財産を相続させる」という遺言を残して死亡。相続財産に不動産と預貯金があり、次男が自分の遺留分を主張して長男に請求をする。
「遺留分減殺請求権」とは遺留分を侵害された人が「遺留分に相当する財産を下さい」という一方的な意思表示により法律効果が発生する「形成権」という権利(この点は新法でも変わらないといわれます)です。
そのため、減殺請求の意思表示をすれば、当然に相続財産が共有になってしまいます。
共有状態になると、その状況の解消には長男次男でさらに話し合い、まとまらなければ訴訟等で共有物分割等をしなければなりませんでした。
新法では、遺留分の権利を主張した場合、不動産の持分等ではなく金銭での支払い請求になったため、不動産が共有にならず、共有解消での争いを回避できることになります。
(もちろん、侵害額を長男が支払わなければその点については争いになります。)
そして、2つ目のポイントは、遺留分を算定するための財産(遺留分額を決めるための基礎となる財産)について、一定の限定がされました。
1.相続開始時の財産
2.相続開始前1年内の贈与
3.贈与当時に贈与者・受贈者の双方が遺留分を損害を与えることを知って行った相続開始前1年より前の贈与
4.特別受益に該当する贈与
「特別受益に該当する贈与」とは、婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として行った贈与のことで、簡単に言うと遺産を先に渡すような意味合いのものです。
旧法では特別受益に当たる贈与はその時期を問わず、遺留分の算定するための財産に入れて計算されていました。
1.相続開始時の財産
2.相続人以外に対する、相続開始前1年内の贈与
3.贈与当時に贈与者・受贈者の双方が遺留分を損害を与えることを知って行った贈与
4.相続人に対する、相続開始前10年内の特別受益に該当する贈与
法改正により、相続人に対する贈与は、1年内の贈与であっても特別受益に該当しない限り、遺留分を算定する財産には加算されなくなりました。
また、相続開始前10年より前にされた贈与は特別受益に該当するものであっても遺留分を算定する財産には加算されなくなりました。
いかがでしたでしょうか。
実際に遺留分が侵害されているか、侵害されているとしたらその侵害額はどれくらいか、侵害請求はどのようにしていくのかの判断は非常に難しいところになります。
当法人には、相続専門の司法書士が在籍しており、また相続に特化した弁護士との強力なパートナーシップがございます。
争点になりやすい生前に遺留分に対しての対策をどうするかについて、遺言や生命保険の活用にてご提案させて頂いております。
まず一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、お気軽にご相談下さい。
自筆証書遺言書保管制度について (2020.06.18)
これまで自筆証書遺言にかかる遺言書といえば、自宅の仏壇や金庫で保管する、といったケースが大多数のようでした。
しかし当然ながら、遺言書の紛失・亡失や、相続人によって偽造されるというリスクもあります。
そういった問題を解決するため、令和2年7月10日施行の法改正により自筆証書遺言書を法務局で保管する制度が新設されました。
今回は自筆証書遺言書保管制度について取り上げてみたいと思います。
≪申請場所≫
②遺言者の本籍地
③遺言者が所有する不動産の所在地
①②③いずれかを管轄する法務局に申請することができます。
ただし、全国すべての法務局で保管の申請ができるわけではありませんので注意が必要です。
保管の申請ができるのは、東京周辺では下記の法務局になります。
東京法務局
【本局、板橋出張所、八王子支局、府中支局、西多摩支局】
横浜地方法務局
【本局、川崎支局、横須賀支局、湘南支局、西湘二宮支局、相模原支局、厚木支局】
さいたま地方法務局
【本局、川越支局、熊谷支局、秩父支局、所沢支局、東松山支局、越谷支局、久喜支局】
千葉地方法務局
【本局、市川支局、船橋支局、館山支局、木更津支局、松戸支局、香取支局、佐倉支局、柏支局、匝瑳支局、茂原支局】
・・・他
≪申請できる人≫
保管の申請をすることができるのは、遺言者本人のみ
遺言者本人が法務局に行き申請をしなければなりません。
また、代理人に預けて代理人が本人に代わって法務局に保管の申請をすることもできません。(遺言書の性質を考えれば当然と言えるでしょう。)
つまり司法書士や弁護士、家族が本人から自筆証書遺言を預かって保管の申請を行うことはできません(ただし保管申請の手続き書類を司法書士等が代理して作成することは可能です)。
なお、本人が法務局に保管の申請をする際に、付き添い程度の介添えであれば他人の同伴も許されます。
≪遺言の申請者(遺言者本人)ができること≫
遺言書保管の申請をした人は、閲覧の請求をすることにより、保管されている遺言書の内容を確認することができます。
閲覧方法は、
・遺言書原本の閲覧
の2種類があります。
モニターによる閲覧の場合には全国どこの遺言書保管所でも閲覧の請求をすることができます。
ただし遺言書原本の閲覧は、保管されている法務局にしか請求をすることができません。
遺言書の閲覧を請求する場合にも手数料が必要になります。
モニターによる閲覧の場合には1回につき1,400円、原本の閲覧は1,700円の手数料を納付する必要があります。
遺言書保管の申請をした人は、申請の撤回をすることにより、遺言書を返還してもらうことができます。
申請の撤回には手数料はかかりません。
また撤回し、返還された遺言書は、自筆証書遺言の要件を整えていれば、その後も有効なものとされています。
遺言書保管の申請をした後に遺言者の氏名、住所等に変更があった場合には、その旨の届出を行う必要があります。
変更の届出は全国どこの遺言書保管所にもすることができ、また郵送により届出をすることも可能です。
≪相続人等ができること≫
特定の遺言者について,自分が相続人,受遺者等又は遺言執行者等となっている遺言書が遺言書保管所に保管されているかどうかを証明した書面(遺言書保管事実証明書)の交付を請求することができます。
この遺言書保管事実証明書の交付請求は遺言者がなくなった後にのみすることができます。
相続人等は、遺言書の画像情報等を用いた証明書(遺言書情報証明書)の交付請求及び遺言書原本の閲覧請求をすることができます。
これによりどのような内容の遺言が保管されているか知ることができます。
遺言書情報証明書の交付請求も遺言者が亡くなった後にのみすることができます。
相続人等が証明書の交付を受けると、その方以外の相続人に対して遺言書を保管している旨の通知がなされます。
これは、相続人間での不公平を生じさせないための措置と言えます。
相続人等は、閲覧の請求をすることにより、保管されている遺言書の内容を確認することができます。
閲覧の方法は遺言申請者と同様に、
・遺言書原本の閲覧
の2種類があります。
相続人等による閲覧は遺言者が亡くなった後にのみすることができます。
②の交付請求の時と同様に、相続人等によって遺言書の閲覧がなされると、その方以外の相続人に対して遺言書を保管している旨の通知がなされます。
①遺言書を紛失したり、受遺者や相続人が遺言書を発見できないといった事態を避けることができる。
②遺言書が生前に発見され、遺言内容が相続人等に知られてしまったり、遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿といったリスクを避けることができる。
③申請時に遺言保管官により、遺言書が法務省令に定める様式に則っているかどうかを確認するので、様式不備によって、遺言が形式的に無効となることを避けることができる。
④公正証書遺言より費用を抑えることができる。
①遺言書があることに相続人が気付かず、遺言書がなかったものとして相続人で協議し、財産分配される可能性がある。
②法務局でのチェックはあくまで様式に則っているかの形式面でのチェックであり、法的に問題があるかどうかまでは精査されないため、将来的に問題が発生する可能性がある。
③遺言者本人のみが申請できるため、何らかの理由で出向けない状態にある遺言者は制度を利用できない。
上記のようにどちらに転ぶかによって、メリットがそのままデメリットに転じる可能性もあります。また内容の部分までは精査されないため、遺言者の望む形を実現できるかどうか、といった部分に関しては、やはり司法書士等の専門家に確認してもらう必要があるでしょう。
いかがでしたでしょうか。
当法人では公正証書遺言をオススメしておりますが、自筆証書遺言の内容精査といったご相談も承っております。
遺言をされたいとお考えの方は是非一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまでご相談ください。